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ぜんざる
夢の日
大島恒武は、世田谷に住む29歳の会社員である。
宮の坂駅近くのアパートに住み、ただ淡々と過ごす、面白みのない男だ。
「ふぃぃー、疲れたー」
と家に帰り、スマホでニュースを見た後に、ご飯を食べる。
そして、風呂に入り、布団に入って眠る。
休日は、一日中テレビで、映画をぼーっと観てる。
なんせ、趣味も特にない人生を送ってきていた。
2009年6月29日、恒武は東急世田谷線の車内に座っていた。
職場は、西太子堂駅の周辺のホテルである。古くはあるが、そこそこの給与ではある。
「この電車は下高井戸行きです。途中の駅でお降りのお客様は中ほど二ヶ所のドアよりお降りください」
列車が走り出すと、彼は携帯を取り出し、ニュースを見始めた。
(日経平均株価上昇、昨年9月以来の高値、9000円台をつける)
(WHO、新型インフルエンザをフェーズ5から6へ引き上げ)
喜ぶべきか、憂いるべきか。わからないニュースばかりが書いてある。
(もういいや、こんなのはテレビで見るべきだ。)
そう思い、携帯をポケットにしまい、カバンから小説を取り出して読み始めた。
列車は、上町駅を出たところだった。
「次は宮の坂〜宮の坂〜お降りのお客様はお忘れ物にお気をつけください」
列車は間も無く宮の坂駅についた。
プラットフォームに降りると、外は真っ暗だった。
「少し、暑くなってきてるな」
そう呟くと、上着を脱いで歩き始めた。
家に着くと、料理をする気にもなれず、適当に目についたカロリーメイトを食べ始めた。
テレビをつけると、夜のワイドショーだった。
「円安に傾きつつあり、えー現段階のデフレ脱却に慣れるかと。あーまぁそのですね」
またかと思い、テレビを消すと、風呂に入って行った。
「そろそろ考えるか」
風呂から上がると、携帯を取り出して、出会い系サイトを開いた。
恒武は、出会い系サイト「シーアイ」でチヒロという女性と遠距離恋愛をしていた。
「チヒロさん。あの話、OKです。リアルで何度かお会いしましたし、もう3年になります。結婚しましょう」
メッセージを送った後、心はドキドキしていた。
「俺も結婚するのか」
そう呟き、布団に飛び込んでそのまま眠った。
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