メアリー・マドロックの狂本

上白糖 赤飯

第一章 本質

著者:メアリー・マドロック


「今日は大人になるための儀式です」


 四人の子供が机を囲んでいました。一人一人はフォークを持っています。ニコニコとして楽しそうです。


「これはガレット・デ・ロアです。このお菓子の中にはがあります。見事に当てた方は晴れて大人です」


 主催者はナイフを取り出しました。お菓子を四等分にします。子供たちはお菓子をフォークで刺しました。


「いただきます!」

「いただきます!」

「いただきます!」

「いただきます!」


 子供たちは口いっぱいにお菓子を頬張りました。時間を掛けて無言で飲み込みます。そして、一人の女の子が言いました。


「卵の感触がありました。私です!」


 外れてしまった子供たちは拍手をしました。主催者も拍手をしました。


「おめでとうございます。あなたは大人です」


 女の子がお腹を抑えながら倒れました。子供たちは拍手を止めません。


「子供たち、を運びましょう」


 三人の子供は大人を持ち上げました。主催者の後ろへついていき、鉄扉の向こうまで来ました。そこは薄暗く、鉄の匂いでいっぱいです。


 進むたびに鉄の匂いが強くなりますが、薬剤のような匂いも強くなっていきます。すると、倒れた大人たちがいっぱい現れました。そこへ新しく大人となった者を子供たちは置きます。


「ベルゼ卿、新たな大人です」


 地面を擦るような音で現れたのは大きなハエでした。シューっといった音を出すだけで何も言いません。


 子供たちは大人を見ました。大人の目は空いていて、別の生き物が入っています。幼虫でしょうか?うにょうにょと頭の中でうごめいています。よく見ると、大人たちの筋肉も動いていました。まだ生きているようです。


「さぁ、帰りましょう」


 涙を流した子供たちは帰りました。

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