第80話 20万
俺とヤヨイ、2度目の対戦だ。一応俺はライバル枠だけど、それは第一部での話だしね。
モエはすでにエンディングを終えているし、戦うこともないからね。
「さぁ、勝ちますよ。言い訳の準備はできてますか?」
「胸貸すよ」
互いにボルガンを向い合わせる。ステータスではこちらの方が上である。しかし、油断はできないな。あちらもレベルを上げてるという事は新たなアクティブスキルを獲得しているだそう。
まぁ、正直いえば油断しても勝てるだろうけど。それは言ったら怒りそうなので敢えて言わない。
「【1番】」
「【左1】」
ほぇ、彼女は俺と同じようにアクティブスキルを番号で呼んでいるらしい。対戦したの一昨日なんだけどね……。
塾で対決して俺は次の日に島で訓練して、一晩明かして今日来たからな。
流石全ての才能を持っている主人公、歴代最も才能あると言われた主人公だ。俺は男版使ってたけど、確かにレベル上がるの早かったな。ゲームクリアもあまりに早くてびっくりしたわ。
全体的な成長スピードも凄まじいね。
「【1番】」
しかし、俺達も経験値は蓄えてきている。昨日は訓練して、動画投稿とか色々して、畑耕して、モエとチカに挟まれて修羅場的な雰囲気も味わっている。
──俺が指示したスキル、雷刃がヤヨイのボルガンに突き刺さった
◾️◾️
私は自信がありました。彼に勝つ自信が。僅か2日でレベルを21まで上げ、彼がしているように【独特の指示】をものにしました。
しかし
「【1番】」
「ボルッ」
ライオンさん。ふざけた名前だと思っていましたが、実力は折り紙つき、いえ、現時点では……私より上でしょう。
まぁ、現時点ではという話ですからね。あくまで現時点での話ですけども。
「【左2】」
「ボル……!!??」
くっ、私の指示が遅かった。それに加えて、そもそもあちらのボルガンの強すぎる。ステータスに差があるのは当然。レベル差があるのですから。
しかし、レベル差以上にステータスが大きく離れている気がします。最初に戦った時もそれは感じましたけど……
エレフォンに表示されているステータス以上に強いのは確実でしょうね。
「建て直しましょう。【1番】」
「【1番】」
ッ!? 回避指示じゃない!? そうか……
その前のやり取りで私の攻撃が彼の攻撃よりも遅いがバレてしまいました。
私が攻撃を指示した時、わざわざ回避せず、直接攻撃しても先手を取れる。そう確信をしたのでしょう。
雷刃、今私が使える中で最速のスキルでしょう。他にもスキルは使えましたが……予備動作や発動時間を考えると、1番最初に覚えて慣れているスキルで戦うことが正解だと踏みました。
しかし、彼もまた同じような戦い方をして、そして、私よりもその精度が上でしたか。
「ごめんなさい……次はもっと上手くやりますから」
私はその言葉を残して、自らのボルガンをエレフォンに格納をした。そして、彼と彼のボルガンがこちらに歩み寄ってきた。
「……今回は私の完敗です」
「今回もね」
「はいはい、強いですね、はいはい」
くっ、このような屈辱をまた味わうことになるとは……しかし、10万円ですか。自分から言っておいてあれですがかなりの額になりますね……
少々高い勉強代……いえ、投資です。勝つための投資なんですよこれは。
「10万円ですね。渡しますからエレフォンを」
「あれ? 違うよ」
「はい?」
「『輝く小判』装備させてるよ。ほれほれ」
そう言って彼は自らボルガンを指差した。すると、首元に何やら装備されている。
輝く小判……確かバーサスが終わった際、相手にお金を与える場合、提示していた額の2倍を与えることが推奨されるでしたか。
あくまでも、各々のルール……あげてもいいし、あげなくてもいい。しかし、あくまで倍額をあげるテイマーが多いらしいですね。
ただ、そもそも入手がかなり困難だと聞いてましたが……
「……それ義務では無いですよね」
「あ、うん。義務では無いね。でも、ほら、与えるべきみたいな空気はあるし」
「……くっ、装備込みでエレモンバーサス! あげますよ! もう!!」
ステータスを上げる効能が無い装備と言われている。それ故にこれをつけている場合はハンデ戦とも言われ、相手が格上で合うことを示す。
相手への敬意を込めて、倍額を渡している人達が多いとか。経緯とかは全く無いですが……
「20万ですか……」
「ありがと」
「……あの、その」
「なに?」
「旅費……なくなってしまったのですが」
くっ、まさか全ての才能を持つこの私が……旅費がなくなるなんて……機能ありとあらゆるテイマーから、勝利してゲットしたお金が全て消えてしまいました。
「そうなんだ。そこの公園はダンボールとか多いらしいよ」
「鬼ですか。私のボルガンも夕飯がありません」
「それならしょうがない。夕飯と寝床は用意するよ」
「おい! 美少女である私が困っていても助けないのになぜボルガンだけを助けるのですか? どういうつもりですか?」
彼は適当に頷いて、そのままコードバトラーに挑みに行ってしまった。夕飯とかは用意するから適当に待っててと言われました。せっかくなので、彼の戦いぶりでもみてみますかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます