第79話 他者視点
私、霜月カナエは和ノ国の【
和ノ国には、とある危険組織の存在が確認されており、その目的は国の崩壊である。
その為、私のように万が一に備え、国家に仕えている。
まぁ、私だけが天照なわけではないけどね。しかし、天照は全員、ゴッドリーグ以上の実力が求められている。
それは、国にて暗躍する組織の危険さを物語っている。
しかし、それに対抗できる戦力なんてそう簡単に獲得ができるはずがない。そこで私達が初心者などを観察し、才能があるテイマーに目をかけようと決まったのだ
──とある国では、わずか1年にて、星の龍を捕獲した11歳の天才テイマーがいたみたいだからね
毎年、私を含めて天照の面々は居るけど。今年は特に注意してみるように言われている。星の龍の一件もあったからね。もしかしたら、こちらの国でも規格外が出てくるのではないかと……
そう思っていたら、本当に居た。とんでもない規格外の二人が。
一人はヤヨイという名前の女の子のテイマー。私も様々なテイマーを見てきたが、ここまでの風格を感じるのは初めてだった。
気持ちが悪い、そこまで評するほどに彼女は底しれない何を感じざるには得られない。
話す言葉は丁寧で、浮かべる笑顔は美しくて、全てにおいて私の、私を含めて全ての人間の上を行っているようで、同じ人間とは思えない。
まだ、駆け出しだということを忘れてしまいそうになる。最初のバーサス、相手の女の子に対して彼女は加減をしていた。
最初から勝利が決まったように笑顔を浮かべて、余裕綽々に勝利を手に入れていた。普通勝利をしたら何かしらの挙動があるのだろうが、彼女は嬉しそうにしない。笑っているが、嬉しくはなさそうだった。
連れているエレモンも、ボルガン。戦の申し子、と言われるエレモンの進化個体前だ。
ボルガンに進化個体が居るのはただの伝説と言われているけど、もしかしたら彼女は本当に……
そう思わざるを得ない。彼女のエレモンならば、伝説にすらあっさりと手をかけてしまうのではないかと思わされる。
だが。だが。だが。
──そんな彼女よりももっととんでもないのが今年は現れてしまった。
そもそも見た目からして、能面を被っているという謎っぷり。名前もライオンフィッシュ竹中、とかいう謎っぷり。
そして、能面を被った妹とずっとお手繋いでいるという、急に可愛さっぷり。
その妹も名前がクイクイと言う、ちょっと変わった名前と言う謎っぷり。
妹は時折、お兄ちゃんにハグしたり、辺りをキョロキョロしたり、キョロキョロしたと思わせておいてまたお兄ちゃんに抱きつくと言う可愛さっぷり。
全てが規格外だった。
何より規格外だったのは、彼の連れているエレモンとそのテイマーとしての才覚だった。
圧倒的とすら思われた、ヤヨイすらも勝利し、更にその勝利は一撃すらくらわない。
完璧な勝利だった。エレフォンで確認をしたが、彼のボルガンはAランクと言うこともあり確かにステータスは他のテイマーのエレモンよりも高かった。
だがしかし、ヤヨイのエレモンとはほぼ同程度であったはずだ。
にも関わらず、この勝利。
「同じエレモンを使っても、使用者によってここまで違いが出るんだ」
思わず、勝負を見ながら私はつぶやいてしまった。ヤヨイだって、千年に一人くらいの逸材であろうに。
私はこれからが楽しみになった。
そして、頼もしくもなった。こんな逸材が和ノ国に現れてくれたことに。
「将棋をしましょう」
「え……?」
まぁ、座学の講義はちゃんと聞いてほしいけど……
◾️◾️
「将棋、この盤上の遊戯をしてことはおありですか?」
「座学の講義受けた方が」
「いいんです。気にしません」
一体なぜこんなことに。さっき、急に大教室から出て行ったと思ったら持ってきた。おそらく外で購入してきたのだろう。
余裕ぶっているが、次から次へと勝負を挑んでくるとは……
「今日はちょっと……そろそろ座学も終わりそうですし」
「今日はこの辺にしておいてあげましょう。しかし、この次はないと思った方がいいですよ」
「俺ももう勝負とかはするつもりはないので。次はないと思ってます」
「ふふふ、そんなトンチを言うとは私に負けるのが怖いと見ました。楽しみですね。次の勝負が」
「……あれ、この子以外と話聞いてない?」
何が何でも勝負をして勝ちたいらしい。わざと負けて適当に突き放したいが俺はエレモンを率いている。
それにクイーンも見ているし、負けるなどと言う選択肢は存在していない。
「さて、そろそろ講義が終わります。皆さん、エレメンタルコードを集めて、ぜひゴッドリーグを目指してください。和ノ区のゴッドリーグはレベルが低いと言われていますが、それを挽回しましょう!!」
霜月カナエがずっと話していた。申し訳ないな。せっかく話してくれたのに聞いてあげられなかった。
まぁ、いいか。
取り敢えず帰ろう。ヤヨイに絡まれそうなので走って帰る
「おっと、私には走る才能もあるのですよ。帰る前に連絡先を交換しましょう」
「……ええ」
「……そんな嫌そうな顔されると」
「能面です」
「知ってますけども」
これ以上は多分無駄だろう。仕方ない交換だけはするか……
「ふふふ、これでネットでも勝負ができます。それでは今日はこの辺で……あぁ、それと貴方に噛みつく人がいるかもしれませんが、まぁ、貴方なら、蚊と同じ程度でしょう」
それだけ言って、彼女は歩いて帰って行った。そのタイミングで、後ろに気配を感じる。
「おい、お前」
あ、彼女の弟であるカガリ君だ。闇堕ちして、最終的に行方不明になるキャラクターである。
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