第72話 才能

 第二部主人公である、ヤヨイを見つけた。なるほど、まだ旅は始まっていないのか。



 設定的にはモエの一個下の年齢らしい。モエがもうすぐ11歳らしいから、なるほど彼女もそろそろ旅に出るのかもしれないな。




『そうみたいね。心を読んだらどうやらそうみたい』




 そうなんだ。と言うことはそろそろスタートするのかもな。何日後か分かる?




『そこまでは分からないわ。彼女は一瞬、そろそろ旅をする年齢になるって思っただけだし。そこを掬っただけよ』





 ふむふむ。そうか……クイーンはイベントとか見たい?




『そうねぇ。見たいわね。アンタがどうやってアタシまで辿り着いたのか、あの子を見れば分かるんでしょ?』

「まぁそうね」

『それなら見ておきたいわね』







 クイーンは第二部のDLCコンテンツ枠である。だからこそ、主人公がたどり着くのはクリア後になる。


 クイーンのDLCはクリアしないとプレイできないからね。ゲームの時の記憶があると言ってもクイーンはほぼないのと一緒だしね。



 見てみたいらしい。




『そうよ。見てみたいの』





 今度また来ようかね。全ての才能を持つと言われた主人公を見にさ。売買の才能もあるから、買うときは全部10%オフ、売るときは20%アップでお金が動くらしい。


 インフレにも程があるだろう。これで経験値2倍で、ステータス上昇数が最大値になる確率アップもやりすぎだと思う。



 ステータスはレベルが上がった時に全て上がるけども、Lランク以外は上昇幅があり、これを最大にしないと最大限には育たない。


 その為、惑星ロストエデンで獲得できるレベルダウンの木の実をゲットするのは絶対に大事だ。


 最大値でない場合はこれを食わせてレベルを下げる。そしてレベル上げて、最大値幅になったら次のレベルに行くべきなのだ。



 グレンとモエにも教えてあげようかと思ったが、ここまで頑張ってきたしそれが無駄になると思うんじゃないかと思うので教えるのは避けている。





『アンタみたいに4000体殆どを高ステータスで育てる奴はいないわよ』

「病室でぼっちだったからね」

『あらそうね』

「ふふふ、これが元ぼっちの力!!!! 今はお前達がいるからさ! 楽しいぜ!!」







──さて、デカイチゴを売りに行くか。ここにはまた今度来よう。







◾️◾️







 



静かな夜、月明かりが部屋を柔らかく照らしている中、ヤヨイは静かに荷物をまとめていました。


「私にとって、他人なんてただの駒に過ぎないんですよ」

『……ぼる?』

「そうですよ」


彼女の側にはAランクエレモン【ボルガン】が座っていた。身長は約130cmで筋肉質でがっしりとした体格がある。


頭部はリザードマンの特徴を持ち、鋭い顎と角張った顔立ち。額には雷を象徴する紋章が光る。 毛はなく、全身が黄金色に輝く鱗に覆われている。鱗の間に稲妻のような模様が走る。


両肩と前腕には雷を宿す金属製の防具を装着。背中には稲妻を象徴する短い突起状の装飾がついている



「……つまんないですね」





ヤヨイは窓の外の桜の木を見つめながら呟いた。その花びらが風に揺れる様子はどこか幻想的でしたが、彼女の視線には冷たい光が宿っていた。





「どれだけ努力しても私には追いつけない。それを理解していない凡人たちは、自分が特別だと勘違いしているようですね。滑稽です」






彼女の声には、まるで相手を見下すような響きが混じっていた。冷たく、突き放すようなその言葉には一切の迷いがなかった。






「でも、だからこそ、利用しやすいんですよね。彼らは私の優しげな仮面に簡単に騙されてくれる。」




ヤヨイは自分の荷物を肩に掛けると、机に置かれた鏡を手に取った。その中には、誰にでも優しそうに微笑む自分が映っている。


「こうして笑って見せていれば、誰も私が何を考えているのかなんて気づきません。凡人たちは単純ですから」


静かに鏡を机の上に戻し、ふっと小さく息を吐く。彼女の表情には余裕があり、そこに孤独を憂う気配など微塵もない。


「私はこの才能を持って生まれた。それだけで、彼らは恐れ、敬い、そして時に憎みます。でも、そんな感情に意味なんてありません。駒として機能してくれればそれでいいんです。」


窓を閉めると、部屋の隅に置かれた小さな桜の枝を一瞥。その目に映るのは過去でも未来でもなく、ただ目の前にある目的だけ。


「この旅の先に待つものが何であれ、私にとってはどうでもいい。ただ、必要な道具を揃えて、利用できる駒を見極めるだけ。それがこの世界の生き方です」


ヤヨイは扉に手を掛け、ふと足を止めた。そして最後に小さく笑みを浮かべ、誰に向けるでもなく静かに呟きました。







「さあ、始めましょうか。私の道を切り開くための旅を」

「……ぼる」





その背中には、孤高の決意と冷徹な自信が浮かび上がり、部屋の扉が静かに閉じられました。



そんな背中をボルガンは追った。

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