第3話 前世の最強エレモン達
入塾をしてから早いもので、もう四年が経った。
結局、俺は一度も誰にも【エレモンバーサス】に負けることはなく、学力もトップで走り抜けた。
友達は出来なかったけども、ぼっちだったけども
でも、良いもんねぇ!!!!
今日から【テイマー】として活動できるもんねぇ!!!
【ラリラ博士】……ではなくて、先生か。なんだかんだで話す機会はあんまり無かったな。ゲームだと名前だけの博士キャラだったけども……。
そう言えば彼女って……どっかで遭難するみたいなイベントがあった。さらっと一瞬だけ名前が出て、そう言うふうになってるみたいだったからゲームをやっていた時の記憶は薄いけど。
「はーい、今日で皆んな卒業だね。先生も皆んなが無事テイマーになれて嬉しいよー。それじゃ、卒業祝いに【エレフォン】を進呈するぜー」
キタキタきた!!! 新品のエレフォンをもらえるんだぜ!!!
これでエレモンを捕獲できる! 旅ができる!! ゲームだといきなりここから始まるけども!! 俺はずっと頑張って勉強してきたから喜び具合はゲームの時の比じゃないぜ!!
ゲームを病室でやっていた時は、沢山育てて、捕獲して……
俺はこの世界来れて、嬉しいけど……
育てた【あいつら】は居ないんだよな。ゲームの時、病気で気が弱くなったり、精神的にしんどくなったときに、ひとりぼっちでずっと暇だった時を一緒に旅してくれた【あいつら】は居ない。
別にゲームだから、ただのデータだから。
そう言ってしまうこともできるけどさ、『俺には、俺の前世には……あいつらしか居なかったんだよ』
「はーい、じゃこれエレフォンね。使い方には十分気をつけるように」
「はい!!」
一人ずつ、教卓の前にいる先生からエレフォンを受け取っている。1番最初のイベントはここから始まるんだったよな。
ゲームの時の記憶が蘇っているようだ。
そして、遂に『主人公』モエが前に行った。
「モエさんは、頑張ったね。沢山の努力をしてきた貴方なら良いテイマーになるよ」
「ありがとうございます。先生のご鞭撻のおかげですわ」
「うん、頑張って」
彼女はジッと、自らの渡されたエレフォンを見つめていた。席に戻ると隣に座る【チカ】と談笑を繰り広げている。
しかし、途中で話を切り上げ伺うように俺を見た。
「アムダ君、最後は貴方ですわよ」
皆んな、エレフォンを渡された。最後に渡されるのは俺みたいだ。ゲームのストーリーだと、【エレ塾】で1番成績が良い子が貰える設定があったから、ラストは主人公の【モエ】がもらうはずだった。
その彼女は俺の前にエレフォンをもらった。そうか、俺が1番だったのか。
「う、うん……」
教卓に向かって歩いてく。その最中に、クラスメイトの声が聞こえてくる。
「はぁ、あいつ結局1番かよ」
「どうせ旅になったら結果出さないでしょ」
「勉強しかできない陰キャって1番キモいよね」
「こっち見た……マジでチー牛できっしょ」
俺、前世だと病気で学校行けてなかったけど、きっと行ってもこんな感じだったんだろうなぁ。
──多分、引きこもりになってただろうなぁ
学校ってどんな場所かって思っていた。きっと、こんな感じだ。俺は馴染めなかったんだろう。
でも、きっと……そうなったとしても
俺にはゲームがあって、エレモンが居てくれたと思う!!!!!!
だから、気にしなくて良いじゃないか!!!!!
ありがとう!!!! 嘗ての俺の精鋭エレモン達よ!! 俺は幸せだ!!
あ、あと開発してくれたゲーム会社とかもありがとう!! リスペクトは大事だよね!!
見ててくれ、今まさに俺は……この世界で一歩踏み出したぞ!!
狭い世界から、広い世界に行くぞ!!!
「はい、やっぱり君が1番だったねー」
「どうも……こ、これがエレフォン……ッ」
【ラリラ博士】じゃなくて先生か。彼女からもらったエレフォン。初めて触った。本物だ。電子スマホみたいな形状、色は紅で画面が異様に綺麗だ。
新品、紛れも無い。
「最初から、この教室で最後に渡すのは君だと思っていたよー。成績も良かったしさ。才能があると思うよ」
「あ、ありがと……ございまぁす」
昔はゲームの中でしか、見たことなかったエレフォンだ。遂に……
「さっさと座れー」
「先生ー、アムダさっさと座らせてくださいー」
「そうそう、団体行動気にしてよ」
「周りのこと考えてよ」
あ、色々言われた。まぁ、良いかな……。エレフォンはあとでじっくり眺めれば良いしね。
──こっから、行くぜ。俺は!! だって俺はネット対戦【元世界1位】だぞ!! 取り返してやるぜ
今は【歴代最弱ライバル枠】の【アムダ】に転生してるけど。そんなの関係ない。俺はやってやる
そう言えばアムダもなんだかんだで、友達が居ないみたいな設定だったな。思っている以上に周りとの関係が薄くて、不器用だからエレモンも弱いみたいな事を言われていたなぁ。
もしかしたら、本来のアムダもぼっちだったのかもな。まぁ、どうでもいいか。
あーあ、これから【エレ塾】が終わったから旅が始まるけど……前世のエレモンとも会いたかったなぁ。
結局さ、あの時、画面に居たあいつらに会いたいのもあるんだよ。自分が好きなゲームの世界に転生したのは良いけど、育てたモンスターは居ない。
あの瞬間、あのたった一つの青春を……もう一度、味わたい
──ビビビッ!!!!!!!!!!!!
急に俺のエレフォンが鳴り始めた。何かの通知を知らせるように……
しかもそれがずっと鳴り止まない。ずっとずっと、ずっとずっとずっと、なり続けている。
エレフォンは、人と連絡ができたり、ネットに接続できたり色々な機能がある。だからこそ、通知音がするのは不思議ではない。
だが、新品で貰ったばかりのエレフォンがこんなに通知が来るってどういうことだ!?
「あ、あれ? 壊れてる?」
「あ、アムダ君、大丈夫? 先生壊れたの渡しちゃったかな?」
教卓の前で俺は呆然としていた。【ラリラ博士】、先生も困ったような表情をしている。
そんな俺達を見て、クラスメイトは爆笑をしていた。
「ぷ、ぷぷ、壊れたの渡されてる」
「いつもお前無言だから、それで丁度良いだろ、くくく」
「早く座ってよ、お前のとかどうでも良いし」
「チー牛のはどーでもいいじゃーん」
ううん、まぁ、あいつらには申し訳ないけどちょっと待ってくれ。何か……違和感がある、なんだ、これ……?
既に俺のエレフォンにはエレモンが格納されてる……?
「……まさか……いや、まじで。もしかして……」
まさか、そんなはずはない、そう思いながらもエレフォンを見続けた。周りは早く座れとか、馬鹿にするとか色々反応している。
ごめん、今お前らはどうでもいいんだ
居るかもしれないんだ。ここに……
俺は教室を飛び出した。そして、広場に出た。広場は俺が居た教室からよく見える場所にある。
学校の校庭みたいに、教室から眺めることができる。たった一人で校庭に出たから、俺が過ごしていない教室の塾生も興味深く俺を眺めていた。
「……居るのかよ。マジで」
俺はエレフォンを空に掲げた。もし、俺の仮説が正しいのなら、居る。ここに居る。
──前世で育てた、エレモンが
全部出すわけには行かないので……一体だけランダムで出すことにした
「出てきてくれ」
そう言うと……神々しい光が俺を包んだ。あまりに眩しくて、眼を瞑ってしまった。
ゆっくり眼を開けた
「──ジグっ」
「マジか……」
俺が【前世】で育てた【Lランク】エレモン。【ジークグラモン】……だった。黄金の肉体、紅の瞳、全身が金塊で出来たようなドラゴンのようなフォルム。
だが、どこか機械的で片手には放射台のような物がついており、片目も特殊な眼帯のようなのが装着されている。
翼があるが、三つのミサイルが打てるようになっており、同時に放射台になっているのでロケットのようにこのエレモン自体が飛べるようになっている。
──そして、とんでもない強さを持っている。ゲームでも【世界に一体】しか居ない、そもそも太古の時代に存在すると言われているエレモンだ。
「ジグ……」
「……あ、あの、俺がわかる」
「……ジグっ」
【ジークグラモン】は俺を背中に乗せた。そして、翼から炎を放射して空に飛来する!!!!
「──ジガァ▪️▪️!!!!!!!!!!!!!」
信じられないほどの咆哮が辺り一面に撒き散らし、そのまま空に飛んだ。信じられないほどのスピードで【エレ塾】が小さくなっていく。
「は、ははは……あはははああああああああ!!!!!!! マジかよ!!!!!! 最高じゃねぇか!!!!!」
空が青い、雲を飛び抜けて更に飛んだ。
「あ、やべぇ……もう、エレ塾も見えないやぁ」
俺、いや俺達からしたら……あんなちっぽけな場所はどうもで良いよな!!
「ジグ……」
「本当に俺が分かるのか……へへへ! 俺はさ! ずっとお前達と走り回りたかったし、旅をしたかった。冒険をして、島とかで過ごしたかった!!! なぁ、しようぜ、今から!!! 今から、始めよう、俺達の……本当の物語を!!!!」
エレフォンには前世で育てた全てのエレモンが格納されていた。数は4000を超える、本来では手に入れられないエレモン、世界に一体しか存在しないと言われているのも二体持ってるし。
やべぇ……こ、これ、この世界だと過剰戦力じゃ……
「まぁいいか」
──この時の俺は失念していた。あまりに自分の前世のエレモンに会いたくて……それしか考えていなかった。
【ジークグラモン】は世界でも一体しか居ないと言われており、更に、存在自体が確認されていない異次元エレモンであったことを。
それを人前で見せてしまったことを。
『ネットニュース【速報】エレ塾生、謎のエレモンを入手する』
『【博士学会】学生に調査依頼を要請する!?』
『未来のゴッドリーグテイマー!? 謎の塾生の正体は!?』
──とんでもない、事態に。ネットでとんでもなく拡散され、一気に素性が世間にバレてしまう……ことを
この時の俺は知る由もなかった
「──星は青くて、丸いだなぁ!!!!! おおー!!!」
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