堕落と理想な主人公!
七芽たそ
第1話 今日もこうして終わるみたい
…な…た…
夜行性とかいう訳ではなく、夜が心地良いというだけでアニメを一気見してしまう。
カーテンの隙間から差す日差しが邪魔。夜明けから黄昏時までの“朝”・“昼間”というレッテルがSociety noiceなんだよ。
悪いことはしてないし働いてもいるため詭弁を埋め込まれることなどないけれど、なんとなく胸騒ぎがする。動画サイトを見漁ったり世間の情報をチェックしたりと堕落を謳歌するのである。
最近の世は偉そうなやつが多い。ネットを見れば「男が…」「女が…」それぞれの固定概念がさぞ平凡かのように主語を大きくする。承認欲求の塊が、人生の敗者が多すぎる!
インターネットなんて現実に居場所のないやつの拠り所だったのに。
人生なんとかなる。わたしはそう思う。
限られた寿命の中で才能がないやつは愚かな人生で終わる。なのに、それを大げさに脚色する。
どうにかして「自分が正しい」と偉そうに言う。
そんな人間を横目に自分には才能があると、勝手な勘違いをしているわたしも愚かなのかもしれない。
微かな境界線があると何処かで願っているのかもしれない。
どんなに人前で輝いているタレントも、毎日見ているネット活動者も、幼馴染も、今すれ違った人だって。
同じように産まれ、人それぞれ育てられ、生きていればどこかで自由に生活をしている。
そんな思想で人畜無害な人生を送っているのだ。
…い…ろ……
喧騒のない無音の中に目覚める。
仄かにうつる外の光はまだ明白としていた。どんな時間に起きるのかもわからないのに義務感に苛まれるアラームなんかを普通はつけない。
「…んー」
がた。スマホの光に照らされる16:30。強引に開く瞼を躊躇なく突き刺すブルーライトに押しつぶされる。
動画を見ながら寝落ちてソファーで睡眠したことにより、うまく休めた気がしない。身体も体調も何処か悪く感じる。
「はぁー。…準備するかー…」
週3回17:00からバイトがあるわたしは30分前から準備を始める。
遅いだろうと思う人もいるだろうがその短時間で準備が整うのなら議論はなりたたない。バイト先は隣駅。徒歩と電車で20分。身支度はまあほどほど。最低限人前に出られるなら言われるまでもない。
「んーっと…あっ鍵、忘れてたー」
日常は変わらない。
変わらなくて当然だ。
平々凡々としていればそれで良い。
なんの大きなイベントも起きず真っ直ぐで時々曲がった、そんな道を歩めば良い。
普通の人間には普通に時が刻まれ、普通な日常が流れていく。それでいいんだ。
忘れていたけれど自己紹介。
わたしの名前は『寒白 菊』。
桃色の髪のポニーテールで黒い紐で結んでいるのが通常。二年のときになんとなくで高校をやめてから一年たったいま、現在継続中でだらだらしている。アニメやらゲームやら。
とりあえずそういうことが好き。
「はあー」
耳元から聞こえる音楽。イヤホンを作った人はなんて天才なのだろう。平和賞ひとつじゃ足りない名誉。
ぎりぎりの、いや計算されたルーティン上の電車に乗って窓際に立つ。
どうやらまたまた世間がざわついているらしい。
有名人の不倫がなんとか。
「こいつは昔からそういう人間なんだから今更だろ。」とか「ほんとうにやばいな。養護している信者がきもい。」とか。大変そうだ。
ホームの階段を上る人々。ひとりひとりに人生がある。
あの綺麗なひとはそれなりに恋愛をして…
そうやって人の人生を考えれば考えるほど虚しくなる。自分の人生が普通…というか平和すぎて。
それでいいんだけれど。
雑踏のなかに映る自分の後ろ姿はどんな形をしているんだろう。
ぼやきたくなるくらい不思議なのか。掴み取れそうなくらい小さいのか。
コンクリートは蒸発しそうなくらい熱を帯びていて12月が恋しい。
でも夏は恋しくて儚くて、8月の日めくりカレンダーが流れる毎日はそれこそ尊いもの。
「お疲れ様でーす…」
「あ、お疲れ様です。」
面白いもので、世間がざわつけど皆働くのだ。
そんなの知りませんよ。と平気な顔をして。
また憂鬱な4時間が始まる。
「らしゃっせー」
バイトをしているときはまるで自分の別人格が働いているみたいだ。
声が大きくなって、たんたんと作業をして。
「あっ…箸いらないですか、はーい」
これ断られる事もあれば入れないとクレームが来るので面倒くさい。
自分で取らせるように統一すればいいのに。
「あっしたー」
とか言って1時間経てば「もうそんな経ったか」
2時間経てば「半分終わったか。」
3時間経てば「あと1時間か」と時の流れは早い。
これもどこかでやりがいを感じているということらしい。
バイト終わって家に帰ってだらだら過ごしてときに寝て。
またまた変な時間に起きて堕落を極めて時が流れて。
そんな有意義で有意義でないとも言えるわたしの毎日。
なんやかんやで一日過ごして。
今日もこうして終わるみたい。
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