オファー①
その後お互い自室に戻って集中しながら作業をしていた。今の時刻は午前8時半。今は今まで出してきた作品のエゴサーチをしている。妹は仮眠をとっているようだ。
今日は日曜日。変な心配は不要な日。
集合時間とかは特にはないから各々自由にある程度やっている。
一番新しく出したものには、
「今までになかった曲風だけど、没入感がある」
「引きずり込まれるような感じ」
「次のも楽しみすぎる!もう一度全曲はしごしよ!」などと好意的な意見や励ましのコメントがたくさんあって嬉しい。再生回数も28万ほどに伸びている。
もちろん、アンチの人からのコメントもある。
「なぜ偏ったものしか作れないのか」
「沼に引きこんで思考を奪って病む人を増やすだけ」
「知り合いがあなたたちが作る曲を聞いてずっと泣いてる。見ていて悲しくなる。もう作らないで」
「二番煎じがすぐ現れる」
などなど。
しばらくするとビデオチャットに千尋が来た。私はコメントのことを話す。
「ま評価は分かれるのは分かってるから特段アンチコメントに動じないようになったよね」
「そうね。私たちは受け入れて前に進む」
「うん」
「私はあなたと作り続けなくちゃいけない」
「……」
「深くて暗くて悲しい場所そんな中に光を生む……そんな曲を」
「……」
「あなたとならこれからも作っていける。そう思うからこそ、私はあなたが歩む茨の道に身を投じた」
「………」
「あなたの曲は本当に心を締め付ける。魂を震わせる。だからこそ、沢山の人にも届く」
「地道にだけど、ここまでやってきて、そこそこ知られてきた。もっと頑張らないと」
「そういえば、話さなきゃいけないことがある」
「多分良くない話、だよね。」
「そう。良くない話。それも2つ」
「2つか。話してもらえる?」
「うん、一つは私が使っていたイヤホンが壊れたから昼間買いに行くっていう連絡。もう一つは……」
「な、何?」
「昨日の夜にまた取材の申し込みが来てた。いつもの人からと、それと、よくわからない大学のサークルからも。感銘を受けたから詳しく話を聞きたい、だって」
「……」
「今回もお断りしておくね」
「うん、よろしくね。千尋」
「わかった」
メール対応は千尋に任せている。頼もしい。
それにしても…………またか。
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