私が私を好きでいるために

七瀬みちる

第1話

 私は私の好きな物全てを、誰かに打ち明けたことがない。

お父さんも、お母さんも、『かわいい私』を求めるから。かっこいい私はいらない。まるで、そんなことを言うように。だから私もかわいくあろうとした。

確かにかわいい物は好き。甘くてフワフワで優しい雰囲気が好き。

でも、かっこいい物も好き。ちょっと辛くてパリッとしてて力強い雰囲気が好き。

好きだけど、こんなことを言ったら私は否定される。だってそういう世界だから。

期待された枠から外れたら除外される。求められた型から外れたら除け者にされる。

この世の中は、そんなふうにできている。

だから今日も私は、周りが期待し求めるかわいい私で平穏に日々を過ごすんだ。

誤って正しい枠や型から外れないように―。

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