エピローグ

第30話

 死ぬ時は、何も感じないそうだ。「夢の中でお迎えがきた」と言う人もいたりするらしいけど、私は特に何もなかった。

「歩!歩…っ!!嫌よ、目を開けてっ!!!」

隣からお母さんの声が聞こえたけど、目は開かなかった。そろそろ、無理かな。

「歩ちゃん、俺まだ君に何もやってあげられてないよ。ねえ、だからもう1度前みたいに笑ってよっ…!お願いだから…!」

反対からは佑紀君のすがるような声が聞こえてくる。ごめんね。私も皆ともっと笑いたかったよ。でも、多分もう、無理なんだ。体のどこにも力が入らなくて、重力なんかないみたい。今にも浮いていきそうな感じ。

 その時、“ピーッ”というあまりにも冷たすぎる機械音が病室に響き渡った。

「――2月28日、10時3分。ご臨終です」

こうして、私の20年の人生が終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る