復讐の雷牙

teikao

序章 日常の終わり

第1話 奪われた15年

 これは日本の何処か。人口約230万人の都市、龍顎リュウノアギト市の物語


 出所を前日に迎えた男がいた。彼の名は霧雨雷牙きりさめらいが、罪名は殺人。懲役15年。


 ………


15年前


「じゃ、行ってくるわ」


 そう言ってアパートを出た少年、雷牙が高校2年生の頃。両親と3人暮らし、貧しくも幸せな家庭だ。成績は中の下、運動神経は平凡。身長は高く痩せ型の彼だが、喧嘩だけは一人前に強い。中学2年生の頃からキックボクシングを習っている。


「雷牙、おはよー」


 同じ団地の同級生、白川零司しらかわれいじだ。母子家庭で貧しくも、彼も不自由なく暮らしている。零司は成績も運動神経も下の下で、喧嘩も弱い。だが人間としてはとても良い人であり、雷牙にとっては親友だ。


「おはよーさん、昨日のボクシング見たか?」

「あぁ、見た見た!マジで最高だったな!」


 他愛もない会話をし、いつも通り学校に向かう。


 ………


 教室に着くと1人の生徒がいつも通り偉そうにしている。この男は神道天音しんどうあまね神道力三しんどうりきぞうという政治家の息子であり、不良だ。生徒はもちろん、教師すら気を使っている。小さな頃からあらゆる習い事の英才教育を受けており、喧嘩の腕も一流だ。皆挨拶をして目の前を通る中、無視して席につくのは雷牙と零司だけだ。2人はこの不良グループが嫌いだった。


「ぉ、ぉはょぅございます」


 そこに山本秋生やまもとあきおという生徒が来た。


「おい秋生、てめぇ今日の金は?」


 秋生は神道達不良グループのイジメの的であった。


「おい、やめてやれよ」


 雷牙が止めると不良グループは舌打ちをして離れていった。


 ………


 その日の深夜、ライガの携帯がなる。イジメグループの1人、三谷恭一みつやきょういちからだ。


「天音さんが呼んでいる、今から学校のグランドに来い」


 時刻は深夜0時。雷牙は逃げたと思われても嫌だったので向かうことにした。

 校門を乗り越え、グランドにはいる。誰もいない…いや、目を凝らすと誰かが倒れているのが見える。そこにいたのは秋生だった。


「おい!秋生!大丈夫か!?」


その時―


「動くな!」


 雷牙はいきなり警察に後ろから押さえつけられた。


「霧雨雷牙、殺人の現行犯で逮捕する」


 雷牙は逮捕された。何を言ってもマトモに取り合ってもらえず、意味不明のまま15年の有罪判決を下された。最後まで雷牙を信じて戦っていた両親は突如、交通事故で亡くなった。親友の零司は度々面会に来てくれていた。


「雷牙…俺は俺なりにお前の役に立ちたい。力をつけて強くなる。」


零司は雷牙の力になりたかった。


「ありがとよ、相棒」


雷牙にとってもそれは支えであった。


 ………


 あれから15年がたった。そしてとうとう出所を迎える日が来た。霧雨雷牙は32歳になっていた。

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