2、

第9話

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「起きた?」


「……んん、」





あれから、本格的に眠ってしまったはる音。


日差しが陰っていき、赤く染まる頃、やっと目が覚めたようだ。



気持ち良さそうな顔を見ると、まだ寝かせてやりたいと思うが。


(…夜、物凄くテンション上がって、朝まで寝ない勢いになるからな。)





「ほら、はる音?」




背中をぽん、ぽん、と規則的に叩いて起こそうとするも、




「…ん、んふふー」




幸せそうに笑いながら、俺の腰に腕を巻き付けてくる。


(ほんと、可愛いな。)





出会った時から、変わらぬこの純粋な可愛さは、なんなのか。


素直で嘘をつけない性格。




(よだれ、付きそう。)



開いた口は遠慮なく、俺の衣服にくっついている。

衣服を少し、上にずらしてみると、案の定。

そこだけ、変色している。



(こんなの、はる音じゃないと、許さないからな。)


つん、と柔らかな頬を指でつつく。



彼女が、したことなら、色濃くなった衣服さえ、愛おしくなってくる。




暫く。


緩やかに開く唇を見ていると、良からぬことをしたくなるもので。


(まだ、起きなそう…)




俺は、起きない程度にその顎を持ち上げ、距離をつめ、薄く開いたそれに、そっと口付ける。


特段、初めてではないその行為を行うのは、彼女が寝ている時の方が多いと思う。




起きていても、拒まれたことはない。


躊躇われたことも、ないと思う。


嫌々しているようにも感じない。



だけど、いつも笑うんだ。





その笑顔は、何度数えたか分からない。

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