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さて、そんな私の聖域を荒らすものが現れたのは、秋のはじめのころだった。誰でも聖域を荒らすものには罰が与えられるのだ。そのことを君はどうやら知らなかったらしい。ずっとにこにことしていたからそうなのだろう。私はどうしても我慢できなくなって、恋する火星の家出のお店の中で君と一度お話をすることにした。
「ここ。すごくいいお店だよね。野地裏にあって、木々に囲まれててさ、駐車場も小さくて、看板もないし、あんまり目立たないからわからなかったけど、喫茶店なんだね。勇気を出してお店に入ってさ、びっくりしちゃったよ。すごくいいお店だったからさ」と君は言った。
私は君と二人でテーブルを挟んで向かい合うようにして座っている。私はいつものアイスコーヒーを、君はホットココアを注文した。私は最初からずっと怒っていたのだけど、君は今の今になっても私がこんなにも怒っていることに全然気が付いていないみたいだった。
「食べるもの注文してもいい?」と君は言った。「いいよ。別に」と私は言った。君はメニュー表を見ながら少し考えてそれから店員さんを呼んで「このバナナチョコレートパフェください」と言って可愛らしいバナナチョコレートパフェを笑顔で注文した。(写真がちゃんとのっていた。バナナがたくさんのっている生クリームたっぷりの美味しそうなパフェだった。基本的に恋する火星の家出のメニューは量が多めだった)
私はアイスコーヒーを細いストローで飲みながらそんな君のことをじっと見ていた。
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