第7章: 絶望と進軍

40 刻々と迫る影

 数日後、国境地帯への防衛準備が進められ、国内のあちこちで出征する兵士たちが町を後にしていた。翔は彼らを見送り、兵たちの顔に浮かぶ様々な表情を目にした。希望と不安が入り混じり、まるで冬の朝焼けのような複雑な色合いを映し出していた彼らの瞳は、この戦いが彼らの人生に刻み込むであろう深い傷跡を予感させた。

 

「彼らに無駄な犠牲を払わせるわけにはいかない。」翔は小さく呟いた。フリーデリケも同じ思いを抱えていたのか、隣で深く息をついた。「彼らの帰りを待つ家族がいることを忘れてはならない。戦場での損失だけでなく、国内の安全も万全にしておかなければ。」


 その後、二人は国防のための準備に本格的に取り掛かった。


 ◇

 

 会議室には重々しい空気が漂い、フリーデリケ、翔、クラウスら要職の者たちが緊張した面持ちで座を占めていた。ドネラ共和国の攻撃が迫る中、国全体が危機的状況に置かれていることを認識し、まず必要な準備について話し合う必要があった。


 フリーデリケが口を開き、冷静に状況を整理する。「私たちは、国境の防衛に向けて兵を送り出す必要があるが、それには十分な物資と補給体制が必要不可欠ね。前線に送る食料や弾薬、医薬品の確保と供給ラインを強化する準備が急務だわ。」


 クラウスも重く頷いた。「戦場では、補給の遅延や不足が致命的な打撃になり得ます。すでに補給部隊は動かしていますが、万が一の事態に備えて、食料や医薬品の備蓄も必要です。国内の物流網も、戦時体制に切り替えていくべきかと。」


 翔もそれに応じるように話し始めた。

 「物資の不足が続けば、戦う力はおろか、国民の生活も揺らぐことになる。戦争を支える兵站ラインが崩れれば、勝敗に大きな影響を及ぼしかねない。だからこそ、強固な補給体制を今から整えておかなければならない。」


 フリーデリケが再び頷きながら、話を進めた。

 「そのためには、まず国内経済をしっかり支える仕組みが必要ね。兵士を養い、戦費を支えるには、莫大な資金が必要となるわ。ここで安定した財源を確保するために、税制改革や戦争公債の発行を検討する必要があるでしょう。」


 クラウスが少し眉をひそめながら尋ねた。

「戦争公債……ですが、国民への負担がさらに増してしまう可能性もあります。生活に打撃が及べば、かえって士気が下がる危険性もありますが、どのように進めるべきでしょうか。」


 翔は腕を組み、少し考え込んだ。

「公債発行や税制の見直しを通じて資金を確保するのは重要だが、物資の価格統制も必要になるだろう。戦争によって物価が急騰すれば、市場が混乱し、さらに国民の生活も圧迫されるからだ。」


 フリーデリケも冷静に続ける。

「その通りね。物資の統制と価格管理を通じて、国内の経済が混乱しないように手を打つ必要があるわ。さらに、前線で必要となる燃料や医薬品などの在庫管理も徹底して、国内外からの補充が途絶えないよう準備を整えましょう。」


 クラウスが力強く頷き、指示を出した。

「前線への補給路を守り、物資の確保に努めます。そして、必要な補給物資を前もって確保し、備蓄を増強していくことを最優先にします。」


 翔も意を決して言葉を続けた。

「確かに、国民にとっては大きな負担となるかもしれない。だが、この戦いが我が国の安全と未来を守るためのものであることを理解してもらえるよう、説明するのも私たちの役目だ。長期戦になるかもしれないが、しっかりと体制を整え、強固な国内の基盤を築いていこう。」


 フリーデリケが頷き、「全てが未来の国のためよ。私たちは、勝利と平和を目指して前進するしかない。補給体制も、経済体制も、国全体で支えなければならないわ。」と、確固たる表情で言葉を添えた。


 シーンが移り国全体が息を凝らし、戦争への準備を進めていた。各部門の要職者たちは速やかに指示を遂行し、戦争に備えた補給ラインと財政の整備が進んでいくのだった。


 

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