異世界で始める財政復興計画～王国を救うために「本気出して取り組みます！」って宣言しちゃいました！～

25 内乱の火花

　ゼルトンに対する経済封鎖が次第に効果を見せ始め、食料や資源が不足する中、民衆の不満は頂点に達し、ついに暴動が発生した。

　翔とフリーデリケは王宮の一室で、状況の報告を受けていた。

「ついに暴動が起きたようです。」フリーデリケは資料を広げながら言った。

「ゼルトンの民衆が、政府に対して立ち上がったとのことです。」

「あなたの策略が功を奏したようですね。」フリーデリケは少し驚いた様子で言った。

　翔は深く頷き、「これも全て計画通りです。」

　と自信を持って答える。

　「今がチャンスです。グラシア共和国で匿われていた革命家レオン・カルヴィスを、密かにゼルトンに送り込みましょう。」

　フリーデリケは興味を示し、

　「彼の思想は、労働階級の権利を重視するもので、民衆の支持を得るのには良い選択かもしれません。」

「その通りです。彼は民衆の心を掴む能力に長けています。」

「彼に資金を援助し、ゼルトンに到達するルートを手配します。彼が現地で支持者を増やし、混乱をさらに煽ることができれば、内乱が本格化します。」

「もし成功すれば、ゼルトンの政府は揺らぎ、戦争どころではなくなるでしょう。」

　フリーデリケは考え込みながら言った。

　「しかし、アルバナ王国の関与が知られてはいけません。」

　「もちろん、秘密裏に行動します。レオンには、私たちの支援を受けていることを決して知られないようにします。」

「わかりました。では、レオンがゼルトンに到着する準備を進めましょう。」

　　　　　　　　　◇

　列車は静かに夜の闇を走り続けていた。レオン・カルヴィスは一人、車窓の外を見つめていた。遠くに広がる暗い風景は、彼の内心の揺れを映し出しているようだった。

　ノルデン王国を密かに通過するこの旅は、緊張感を伴っていた。共和国での亡命生活は長かったが、今、彼は再びゼルトンに戻る道中にいた。祖国が混乱に陥り、暴動が広がり始めたそのタイミングで、自らが果たすべき役割は大きいと感じていた。

　ノルデン王国はゼルトンと敵対しておらず、彼がこの地を通過することは表向き合法だった。しかし、誰もが知ることのない秘密裏の目的が、彼の胸に重くのしかかっていた。アルバナ王国の援助を受け、ゼルトンを変える使命を帯びた彼にとって、この旅は決して穏やかなものではなかった。

　「もうすぐだ。」彼は小声で呟く。ゼルトンへの帰還が迫る中、心の中で1つの思いが燃え盛っていた。彼は、圧制の下で苦しむ民衆を救うために戻るのだ。暴動が起きていると聞いた時、彼の胸は高鳴った。これはチャンスだと直感した。

　その日、彼はグラシア共和国を出発し、密かにゼルトンへの道を進む。彼は、自由と平等という理想を胸に、共に戦う仲間たちの顔を思い浮かべた。彼らの期待に応え、必ずやこの国を解放してみせると誓った。彼らは、自身の思想に感銘を受け、共に戦う仲間となるために彼の元へ集まった。

「我々は、自由を手に入れるために戦うのだ。」彼は道の途中で、支持者たちに向けて語った。彼らの目は輝き、期待に満ちていた。彼は彼らの希望の象徴であり、背負っている重圧を感じたが、それが彼をさらに奮い立たせた。

　ゼルトンに近づくにつれ、彼の心は高まっていった。経済封鎖が効果を見せていると聞き、民衆の不満が爆発するのを待っていた。そして、その不満が暴動に繋がるのを確信していた。

　彼の膝の上には革製の古いノートが置かれていた。そこには、彼が持つ未来のビジョンが細かく書き込まれている。彼はそっとノートを開き、ページをめくった。

「労働者が立ち上がる日が来る。彼らこそが真の力を握るべきだ。ゼルトンは資本家と貴族たちの手で腐敗しているが、民衆の力でその腐敗を打ち砕くことができる。」ノートの文字を目で追うたびに、レオンの決意は深まった。

　彼の目は列車の内部に戻り、他の乗客たちをじっと観察した。誰もが各々の旅に思いを馳せている様子だった。だが、レオンにとってこの旅は特別な意味を持つ。この列車がノルデン王国を抜け、ゼルトンに近づくたびに、彼の心は徐々に高鳴っていく。

　「ゼルトンに戻れば、すべてが始まる……革命の火が民衆の手で灯されるのだ。」彼は心の中でその未来を描きつつ、ノートに次の言葉を書き込んだ。

「私の帰還がゼルトンを変える。労働者たちは目覚め、共に立ち上がるだろう。権力は我々の手にあるのだ。」

　列車が速度を上げ、ノルデン王国を越えようとしていた。レオンは深呼吸をし、意識的に肩の力を抜いた。何事もなくノルデンを通過できれば、ゼルトンはもう目と鼻の先だ。彼の胸に宿る使命感は、周囲の闇を照らす灯火のように揺らぎながらも、決して消えることはなかった。

　ついに、彼はゼルトンの境界を越え、彼が夢見た場所に立っていた。混乱が広がり、民衆は政府に対して声を上げていた。レオンは、これが自らの戦いの始まりであると感じた。

「今こそ、行動の時だ。」

　夕焼けを背景に、レオンは演台に立ち、力強い声で民衆に語りかけた。彼の言葉は、まるで雷鳴のように人々の心に響き渡り、彼らは一つになって権力に立ち向かうことを誓った。

「立ち上がれ！我々の声を届けよう！」

　レオンの声は、混乱の中でも響き渡った。

　レオンの言葉は、民衆の心に火を灯した。彼らは、レオンを救世主として迎え入れ、彼の後を追って立ち上がった。

その夜、ゼルトンは、革命の炎に包まれた。