第34話

「まぁ、それくらい、その誰かさんに構いたくて仕方なかったんでしょうね。その誰かさんが心配で心配で、デスクを片付ける暇も惜しんでその、誰かさ………」









「………ああ!そうだよ!その誰かさんが心配だったんだよ!」




悔しそうに、でも頬を染めることも忘れず私を見てきた。






(ああ、もう。)



何でこの人は、本当に…………







「あー、見てられないわね。後は二人でやりなさい。私は資料室で資料探さないといけないから、先行くわ。まだ、あと20分はみんな戻らないと思うから……その間にふたりともその顔元に戻しときなさいよ。」




そう言った華城さんは、カツカツとハイヒールの音を響かせながら出て行った。







(はぁ。

なんか、どっと疲れが………)





「はぁ、何なんだ。あいつは。」




未だ顔を赤く染めたままの佐々木さんが、疲労も顔に滲ませた。





「………ふふ。」



「何笑ってんだよ。」




むかつく、と言いながら私をベシッとたたいた。





「いた!今日何回たたくんですか。」




「知らね。お前が呑気に笑ってるからだろ。」




「や、だって。佐々木さんがあそこまで遊ばれる姿って滅多に見られないから。」




ははっと声に出して笑っていると、





「……もーいーよ。何でも。さっきの全部本当のことだし。」





頬杖をつきながら、少し拗ねている様子の佐々木さん。





(なんか……)




「佐々木さんって、ふたりの時ってキャラ違いますよね。」






大人っぽいのに子どもっぽくも感じる。


(かわいい……)



色々な顔を見せてくれる。


そんな些細なことを嬉しく思ってる自分がいる。






「それを言うなら、お前もだろ。みんなの前だとすげー、馬鹿っぽいけど……

俺の前では………」






「、俺の前では………?」

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