第11話

_______________







「美味かった。」



「はい。なんか、毎日言ってくれてありがとうございます。」



(何、作っても言ってくれるもんな…)



「いや、それを言うなら俺が作ってもらってる方だから。毎日、ありがとな。




・・なんかお前といる時間って落ち着くんだよな。」




(それは、)



彼は、すごく真っ直ぐな人だ。


大事なことは必ず、こうやって伝えてくれる。




(私も…です。)




「・・・まあ、職場でも毎日会ってますからね。」



「・・だよな。落ち着かないほうがおかしいか。もう、3年だもんな。」



(3年、か…)




3年という月日は、長いようで短い。



ただ、彼のことをわかるには十分な時間だった。



それは、おそらく、彼も。




ただ、


 

 

「…そう言えば、佐々木さん。」


「ん?」


「毎日、家に来てくれますけど、その…大丈夫ですか。」


(なんて、言えば…)



 


「…それは、なにが?秋乃。」



(言いの…)



この表情は不機嫌なときに見せる顔。


 


「…佐々木さんの、」


「…俺の?」


 

  

触れたいだけど、触れられないことも、ある。




「…家ですよ。」



(大丈夫って、なにが…だ)




「・・あーーそろそろやばいかもな。」



「やばい?」



「俺の…洗濯物。」


 


「え。」



「なんだよ、その顔。仕方ないだろ、最近残業続きで部屋の掃除も洗濯もできてないんだよ。」



「・・そ、れは、意外・・ではないですね。」



(話、逸らしてくれた…)




「・・おい。そこは、嘘でも意外ですっていうとこだろー。」




「・・・・・・・イガイデス。」



「…棒読み、アリガトウ。」




佐々木さんもでしょって言いながら笑いあった。



(ほんと、やさしい…)

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