12.5.オルフィードの魔法使い(絵本より)



 昔々のその昔。

 まだこの場所に、古い王国があった時代。

 緑豊かな王国に、本の大好きな魔法使いがやってきました。


 魔法使いは、王様に挨拶をしてこう言いました。


「私は、本が大好きで旅をしている魔法使いです。このお城にある本を、読ませて頂きたくてきました」


 魔法使いは、一生懸命お願いします。

 そんな魔法使いに、王様は言いました。


「ならぬ、ならぬ。どこの者ともわからない魔法使いに、大事な本を見せることはできない」


 魔法使いはどうしても王様にお許しをもらいたくて、今まで読んだことのある沢山の本の話をしました。

 魔法使いの話を気に入った王様は、その後しばらく、魔法使いを客人としてもてなしました。

 その間にも毎日毎日、魔法使いは沢山の話をしました。


 魔法使いが王国に来て、しばらくたったある日。

 王様が、原因のわからない病気になってしまいました。

 そんな王様に、魔法使いがある薬の話をしました。

 王様が実際にその薬を飲んでみると、なんと、王様の病気はすっかり治ってしまったのです。

 王様は、自分の病気を治してくれた魔法使いをすっかり信用して、言いました。


「王女の教育係をしてくれるなら、あるだけの本を自由に読ませてやろう」


「わかりました。王女様にいろんな事を教えましょう」


 こうして、魔法使いは王女様の教育係になったのです。

 それまで、勉強の苦手だった王女様は、魔法使いの楽しい授業に夢中になりました。


 そんな王国は、しかしいつまでも平和ではいられませんでした。


 何年も経って、王女様が大きくなった頃。

 隣の国が、王国に攻めてきたのです。

 戦いは激しくて、沢山の人が不幸になりました。

 緑でいっぱいだった国が、どんどん枯れた国になっていきました。

 悲しい国を見ていられなかった王女様は、泣きながら、魔法使いにお願いしました。


「魔法使いさん、お願いです。こんな戦いは、もういや。あなたの力で、終わらせてください」


「わかりました」


 魔法使いは、王女様のお願いを聞いてあげました。

 強い魔法で、隣の国をやっつけて、枯れてしまった国に、緑を沢山増やしてくれました。


 美しくなった土地に、魔法使いは新しい王国を作りました。

 オルフィード、という名前がつけられたその国は、とても平和で幸せな国になりました。


 魔法使いは、今でも、王国を見守ってくれているのです。


                        ――おしまい。

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