遺書
只野くん
1ページ目 夏休み
高校生最後の夏休み最終日、俺は部活に顔を出していた。
「間島先輩、今日はもう終わりです、あとはアップです。」
俺は荷物を持って体育館を出た。
教室に向かおうと鍵を取りに職員室に向かった。
夏休み序盤に数学の課題を忘れた事に気づいたが、取りに行くのが面倒くさく、先延ばしにしていたらまさかの夏休み最終日に取りに来る羽目になった。
「3年A組、間島葵です、教室の鍵を...」
キーボックスに教室の番号「31番」が無かった。
「間島か、どうした?」
数学教師の「内海光一」先生が欠伸をしながら歩いてきた。
この人はいつもやる気のない教師、先生としてどうなのかと思う。
「教室に入りたいんですが、鍵が無くて。」
「あれ、誰か持っていったのかな...もしかしたら誰かが持っていったのかもな。」
夏休み最終日に登校する奴なんて俺以外に居ないと思ったが、いるもんだな。
教室に向かってる途中、グラウンドでランニングしている後輩たちを見かけた。
「暑い中よく走るな...」
後輩たちを眺め、教室に入るとクラスメイトが1人席についていた。
確か彼女は「桜宮萌音」クラスで中心的存在。
ロッカーから課題を取ろうと近寄ると彼女と目があった。
「...間島、君?」
彼女は俺に気づくと書いていたノートを隠した。
「あ、ごめん、課題忘れたから。」
「私、先に出るから教室の鍵、お願い。」
課題を探していると先に彼女が教室から出ていった。
教室の鍵を締め職員室に鍵を返しに階段を降りていくと1冊のノートが階段に落ちていた。
ノートには「死ぬまでにしたい事」と書かれていた。
多分、無くしたらいけないノートだろう、一応拾っていくか。
ノートの後ろを見ると「桜宮萌音」と書かれていた。
彼女のか。
「死ぬまでにしたい事って...考えるには早いだろう。」
ノートをまじまじと見ていると階段下から急いでる足音が近づいてきた。
息の荒い桜宮が階段を駆け上がってきた。
「あ、間島君!ノート落ちてなかった?!」
「多分、これ?」
ノートを渡すと彼女は落ち着いたのかため息をついた。
俺はそのまま鍵を返しに階段を降りた。
まだ数学の課題を終わらせてない俺の唯一の友人「半田秋夜」を家に呼んだ。
1時間後に着替え等持ってきた秋夜が家に来た。
「葵、見て新しいピアス。」
秋夜は中学を卒業すると同時に耳に穴を開けた。
高校でバレないように髪を女子並みに伸ばして隠している。
「似合ってんじゃない。」
勉強道具を取り出し最後の課題を早く終わらせ、俺達はSwitchをし始めた。
「あ、聞いた?隣のクラスの高岸と北村、別れたらしいよ。」
「お前の情報はいつもどこから来てんだよ。」
毎回ゲームをしながら話している。
秋夜は学校1の情報持ちで同学年の恋愛情報、他学年の恋愛情報も把握している。
まぁ人から信頼されやすい秋夜は自然と噂から寄って来るっていうか、なんていうか。
「そうそう、尾崎、桜宮さんをデートに誘ったらしいけど、忙しくて断られたんだって。」
尾崎、クラスでも人気のある男子だ。
身長も高く、サッカー部のキャプテンをしている。
「あの尾崎がね、これで今年に入って何回目よ。」
「多分2桁行くね。」
尾崎は桜宮が好きすぎて今年に入って合計13回デートに誘っているが全敗。
イケメンで性格も良い、頭も良い尾崎が断られたら、誰も成功しないんじゃないか、そう噂されている。
そんな話をしたりで夕飯時になったのでゲームを一旦辞め、夕飯の買い出しにでかけた。
スーパーに行くと見慣れたピンクの髪が見えた...桜宮だ。
近所に住んでいるとは聞いていたけど、偶然すぎる。
今日は学校で会い、その後はスーパーで会うなんて。
他の人からしたら嬉しいのだろうが、こんな偶然俺は嫌だ。
俺は気づかれないように彼女と一定の距離を取り食材を選んだ。
一番怖いのは横にいるこのバカだ。
秋夜は同じ高校の人には必ず声をかける習性がある。
このバカが彼女に気づかないように秋夜の死角になるように...
「あれ!桜宮さんじゃん!」
このバカ、1回ぶっ飛ばしたい。
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