第34話 女神介入

『それは流石にしつこすぎると思うんです〜。』


脳裏に響くようにも聴こえる声と、カッという光と共に空から白く輝く雷がザモンを襲う。



『んナッ!? まタシてモジャマダてすルノカうンめイシンんんンン!』


雷を落とした天を見上げ、怒りの咆哮をあげるザモン。その姿は身体の節々に帯電しており、それは何かを封じ込められている様な風貌であり、明らかに効いている様にも見えた。



『邪魔立てとは失礼な〜。 元はと言えば貴方がたから始めたんですよ〜?』



ザモンと対話する天の声に対し、反応は三者三様であった。


ワールドアナウンスで聴いたであろう聞き覚えのある声に、「なーんだ強制イベントか」と安心や納得するプレイヤー勢。


唐突に天から響く正体不明の神々しさを感じさせる声に、恐れ慄く者や、自身の精神状態を疑う者など、恐怖寄りの反応を見せる傭兵勢や騎士団勢。


そしてどうやって判断したのか見当が付かないが、声の主は自身らが信仰している主だと確信し、天に向けて祈りを捧げる教団勢だ。



『ナゼワれラのじゃマヲスる!?』


『運命神ですもの〜。運命を捻じ曲げられては困るんです〜。』


『ナぜワからナイ! キサまもコノセカいのソンザイダろウ!?』


『しーつーこーいーで〜す〜。ほいっと〜。』


それでも抗おうとするザモン目掛けて再度、白く輝く雷が天から駆ける。



『ガァァァァァァッ! …テンにクミスるばカドモメ… オボエてオケ… ヤミはイつデモキサマらヲノゾいてイルゾ。キヅイたコロにハモウオs…n…』


確かにを見てそう言い残すと、ザモンは光の中で漆黒の玉の様に小さくなったかと思えば、光が収まった頃には影ひとつ無くなっていた。


何かを覚えつつも、ザモンの消滅を確認した。

なんとも呆気ない、納得できない終わり方ではあるが、結果としてなんとか脅威を退ける事が出来たようだ。



…なんとも情けない。命を預けられるような武器があればもう少しは自らの力で決着をつけられた可能性があったのだろうかとも考えたが、弘法筆を選ばず。なんて昔の偉い人は言っている。単に実力不足、もしくは予備を持ち合わせなかった俺の落ち度だ。


武器が折れるなんて何年振りだろうか、久しく獲物を失っていなかった為予備という思考に行き着けなかったのも原因のひとつだろう。



最近恒例となってしまった1人反省会を脳裏で繰り広げていると、そんな脳内会議を乱す者が1人… いや1現れた。



『ど〜もど〜も〜。こんにちは〜トーマ。 今回はだいぶ危なかったですね?』


ほわほわとした喋り方で、PCのディスプレイ程の大きさのウィンドウ内から話しかけてくる。


…何故干渉して来ているんだこの運営カミサマは。というか何なんだこのウィンドウ。もしかしなくても個人宛か?



『お〜っ、ざっつらいと〜♪ いい読みですね〜だけにっ。なんつって〜☆ …コホンッ、トーマと個人的なお話をする為にご用意してるんですよ〜?』


思考を読んでくるのか… と気構えたが、そもそも脳波を読み取って身体を動かしているゲームだ。運営なら読み取れるのも容易なのかもしれない。



『仮にそうだったとして〜、そんなプライバシー無視のゲーム存在して良いと思ってるんですぅ…? まぁ私自身がプライバシー無視してるんで〜? 言えた事じゃ無いんですけど〜。』


そう言ってむすっとジト目を向けてくるクレアトール。神様の癖に何処か人間らしさを感じるのは気のせいだろうか。それとも…。


兎も角確かに昨今そんなプライバシーを無視したゲームなど一瞬で燃え上がるだろう。折角アプデで奇跡の復活を果たしたのだ、永く続いて欲しいものである。



『そ〜ですそ〜ですっ。分かればよろしいのですよ〜? 私の大きな努力と〜、ほんの少〜し貴方達先遣組のお陰があって今こうしてこの世界は続いているのです。その点は貴方達に感謝ですね〜』


…? 俺達の動作を学習させる事でアシストシステムを組んだのだろうか? であればアプデ時期にも納得ができる。そりゃ3年かかるわ…。


でもどうせなら言ってくれていればまだ話は変わったんじゃないのか…? 「学習させてるんで時間ください。」と一言でも出ていれば、「この運営は見捨てた!」だの「アプデは来ない!」だの言われずに済んだかもしれないのに。



『そんな文句言わないでくださいよ〜。 こちらにもってのがあるんですよ〜?』


嫌ににアクセントを付けたイントネーションで言葉が紡がれる。あちらさんにも事情はあるらしい。


そういえば文句で思い出したがあの難易度設定は如何なものなのだろう。そもそも最終的にクレアトールが介入する事は決まっていたのだろうか?



『それもですね〜。 時が来れば分かりますよ。…嫌でも、ね♪』


意味深な事を言ったかと思えば声のトーンを下げ怖がらせにかかるクレアトール。この調子なら揶揄われているだけかもしれないな。



『あ、そうそうトーマ? この後お仕事が待ってますからね。助けてあげたんですからこれくらいはして頂かないと〜 詳しくは っ 見てくださいね?」


そう言ってウィンドウ内から、こちらの視界端をリズムに合わせ器用に指さすクレアトール。その方を見ると、メッセージが届いている事を通知するアイコンが2、ポップされていた。

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