第10話 死闘(別視点)

本日2話投稿予定です。



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side 勇者ブレイ?


チッ…わざわざワープポータル使って種族ボーナスのない人間族拠点まで飛んできたっつのになんで足止めくらってんだよ。


今頃初心者共をキャリーしてハーレム作れてるハズだろ!?こいつ俺の邪魔しやがって…


あれだろ?ヒーローか何かに憧れちまうもんだよな?

物語の主人公にでもなったつもりか?www

漫画の読み過ぎだ馬鹿がッ



そもそもあの時ブレイの野郎が俺をレイドパーティに加えるのを断るなんざしたからこんな事になってんだ…参加できてれば今頃トップランカーになってたのは俺だったはずなのに!


終焉龍レイドに参加できるレベルだった俺といい勝負できる奴なんざそれこそ参加した奴らだけだ。

ヒーロー気取りのイキリ転生組なんざ速攻潰して遅れた分を取り返してやる。


いや?むしろ死闘で貰える報酬を考えればおつりが来るくらいプラスだ、ツイてんぞ俺!



どうやら目の前のカモが転生組ってのは本当らしく、転生組特有の転生ボーナスである【1番使用回数の多かった武器カテゴリから1本】の武器を持っているようだ。


俺は弓だ。魔法を矢に乗せる、所謂【魔弓タイプ】と呼ばれるビルドをしていた。

今回のアプデで弓や魔法に適性のあると予想されているエルフが実装された時は正に天啓だと思ったな。俺中心に回ってる、って事だ。俺こそがだよカモ野郎。


今は難しいかもしれねぇがいずれは本物のブレイもぶっ潰して俺がトップランカーになってやる。お前はそのトップランカーへの道の第一歩だ。ありがたく踏まれやがれやw



インベントリから弓を用意する。俺と相性が悪いもので言えば魔力無効系の魔法付与エンチャントがされた盾などだが、転生ボーナスといえど初期配布の武器なんざ周りより1ランクグレードが高いだけだ。この段階でそんなものを持っている奴などいるわけがない。



「お前弓を使うんだな。」


「弓が一番つえーだろうがw そういうお前はなんなんだ?大盾に縮こまりでもするのかァ?w」


「俺はずっとこいつだよ」


あいつは…刀!?www

刀なんざ火力は高いが切れない・すぐ折れる・扱いづらいで近距離最弱武器じゃねえかw

刀使いなんての野郎くらいしかまともに使える奴いねえだろ!あれか?憧れちまった口か?ww

憧れるのは自由だがそんなおもちゃで俺に勝とうとしてるなんざ舐められたもんだ!



決闘システムの賭け対象をALLに設定。両者の間に浮かぶ決闘ロゴが死闘ロゴへと変化する。

死闘モードへと変化したことが周囲にも伝わり、ざわつきがより大きくなる。


野次馬がここまでざわつくのにも理由があった。決闘システムに関係があるのは当人だけではなく、居合わせた者も関わることができる。


所謂が出来るのだ。どちらが勝つかにBETする事ができ、勝てば倍率に合わせて資金を潤わせる事ができる。BETできる額に上限が設定されている変わりにどれだけ人気に差があっても1.1倍はキープされる。1.0倍にはならないのだ。なおその理由からどちらにも賭けることはできない。


因みに八百長かどうかの判断はAIがしているようだ。もちろん八百長と判断されれば賭けは不成立、決闘した当人達にはペナルティが科せられる。


野次馬も今の状況を理解しているようで、オッズは大きく傾いていた。



「まぁ〜流石に1.1倍だよなァwww お前も周りの奴らみたいに少しは賢ければ喧嘩売らなくて済んだのになぁwww」


「ぴったり10倍か。自分自身にBETできなくて残念だよ笑」


「喧嘩売ってんのかお前!」


「そんなに熱くなるなよ、お前の方が有利なんだろ?」


そうだ、さっさと捻り潰して遅れを取り戻すんだ。いや、こんだけ煽られたんだからじわじわと潰して俺の強さを周りに知らしめてやるか?


死闘開始までのカウントダウンが始まる。




5…




4…




こんだけの人数に見られるならいい宣伝になる、次の仲間も探しやすくて願ったり叶ったりだ!と有頂天の勇者。




3…




2…




対するは至って自然体。散歩にでもこれから行こうかと言わんばかりに肩をくるくると回して体を慣らす転生組カモ




1…




…ッ!



死闘が始まる。初手で相手の足を潰さんと矢を射る勇者。じわじわ攻めるにはまず機動力を削ぐのが1番だ。


ニヤニヤと矢の行く先を見守っていると、

あと少しで、というところで足をずらされる。



「…ハッ!まぐれかよラッキーなやつだなァ!」


気のせいか?まるでそこに矢が刺さると分かっていたような足の動きだった。そこに刺さる未来が見えていたと言わんばかりに。相手は不敵に笑うのみ。


気の迷いを悟らせないように中距離を保ちつつ牽制する。近距離戦の方が得意ではあったが、相手は近距離武器、安全圏から甚振れる中距離一択。近づかせなければ怖くないのだ。



…当たらない。


鈍色の刀で逸らされるか、絶妙な距離感で躱される。野次馬もざわつき始めた。このままでは今後の活動に関わる、こんな雑魚カモに手こずらされたと掲示板で知れてみろ。後ろ指を刺されるなんざ俺のプライドが許さない。



「…クソがッ!」


中距離戦をやめ近距離へと近づく。安全圏というリードを失うがここからは俺の独壇場だ。さっさと潰れろ!


矢の弾幕を張る。

体の動かし方などVRMMOにしては現実的な処理をするこのゲームだが、ある一線を変えた瞬間ファンタジーに一変する。

弓で弾幕が張れ、剣で高速の魔法を切り伏せられる。

数ある武器種の中でも近・中距離に対応できる弓は強武器に分類されているほどだ。



…?

打てども打てども当たらない。

まるで蝶のように、舞い散る桜のように、ひらりひらりと躱されるのだ。

直感が思い至ってしまう、




と。



「…ッんで当たんねえんだよ!!!」



追尾スキルを使ってないとはいえこの距離の俺の弓を躱すなんざ不可能だ! 本物の勇者にだって掠らせた弓だぞ! それこそチーターか未来でも見えてる奴じゃない…と…!?



「お前…まさか…まさか…!?」


「可哀想だから教えてやるよ、あいつのメイン武器はだ。 後半は色々使ってたからなんでも使えるように見えたかもしれないけどな。」


疑う材料がなくなった。

確定でこいつは…



「未来…視…」


「そーゆーこった。 じゃあな偽物。」




陽の光に煌めく鈍色が俺の首に迫る。





そこで視界は暗転ブラックアウトした。

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