第4話

社員専用の通用口を抜けて、私の勤務先である秘書室のある八階までをエレベータで上がると。


 すぐ手前に、秘書室が見えてくる。


 その奥へと続くゆったりとした広さのある通路には、落ち着いたワインレッドの絨毯が敷き詰められていて。


 そこには、等間隔で並んでいる重厚な扉が幾つかあり、なんとも立ち寄りがたい雰囲気を漂わせている。


 それもそのはず、ここのフロアには、『YAMATO』の重役たちに与えられている執務室があるからだ。


 といっても、なによりも格式を重んじて、会釈に関しても厳しいと評判だった、前会長である神宮寺じんぐういじみやび女性会長がこの春勇退されて。


 代わりに、一人娘である麗子れいこ会長が就任されてからは、少し、アットホームな雰囲気になったということで、立ち寄りがたい雰囲気は和らぎつつあった。


 それに、この春、副社長から社長へと就任された前会長の孫であり、麗子会長の長男であるかなめ社長は、以前は人を寄せ付けないオーラのようなものを漂わせていて。

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