第2話

そのお店は広島にしかない有名な和菓子やさん。紅葉饅頭も売ってる。



奥の方にお茶できる場所もあって大澤くんが店員さんに「二人です」って、伝えた。


「本宮さん、何食べる?」


私をジーッと見ながらそう聞いてくる大澤くんがすごく素敵で、また私の胸が高鳴った。



「……これにする」



写真を指さすと「分かった」って、また優しく笑う。


そして軽く手を挙げて店員さんを呼んだ。


その挙げた手もすごく、綺麗。



「ねぇ、大澤くん?」


「ん?なに?」



コーヒーゼリーを食べながら大澤くんは顔をあげる。


私も食べるために顔を少し前に出してたから思った以上に近い顔にビックリしてしまった。



「あ、ごめんね」



大澤くんが姿勢を正して「なあに??」ともう一度私に聞いてくる。



「怒られないかな、これ」


私の不安な声に大澤くんは少し寂しそうな顔をした。



「嫌だった?」


「そうじゃなくて……。

私達のせいで班長の和泉くんも怒られちゃわない?」


大澤くんの食べおえたゼリーの器とスプーンを店員さんが片付けた。


「3時までに駅に行けばそこで会えるから、チクられなければ誰も怒られないよ」


そして私の食べてるぜんざいの抹茶アイスを「ちょうだい??」と、首を傾げる。


私がスプーンを渡すと「ありがとう」と、また優しく笑った。


「甘くない?」


「少し甘い」


私が聞くと大澤くんはアイスを食べながら低い声で言った。



「だけど本宮さんと間接キスだね」



間接キスって、直接のキスよりもなんだか少し嫌らしい気がした。



お店を出て手を繋ぎながら二人で駅に向かってたら違う班の人達が前にいるのが見えた。



「……カクちゃん達だ」



大澤くんは私の手を握ったままお店とお店の間に隠れる。



「よりによって……。最悪だなぁ、もう」



大澤くんが呟いて、私に「ごめんね??」って謝ってきたけど、そんなことより大澤くんとの密着度に私の心臓は速くなる。


聞こえてしまうって、そんな気がした。



「……行ったかな」



離れようとした大澤くんの手をギュッて、握った。ビックリした顔の大澤くん。



「まだ、隠れてたい、かも……」



私が言うと大澤くんはしばらく静止した。



「大澤くんともう少し一緒にいたい」



近くを流れる川の水の音が聞こえる。



「……また、誰か来るかもしれないしね」



大澤くんがそう言いながら、私をギュッと抱きしめた。



少し暗いのと、人がいないのと、見られるかもっていうのが私の鼓動を更に早くする。



大澤くんもドキドキしてるのがわかった。

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