八代家の日常
斗花
八代家のキョウダイたち
第1話 3番目*空(主人公)の苦悩
単刀直入に聞く。
これを読んでる人の中に、八人兄妹の人はいますか。
俺より兄妹の少ない諸君。
気にすることはない、恐らく不自然ではないだろう。
俺と同じ、あるいは俺より多い諸君。
どうか友達になって欲しい。
生まれて21年間。
兄弟が多いことで、たくさんの人たちにイジられてきた。
俺自身は兄妹が多いことを決してマイナスには捉えていない。
ただ、それは状況と質による。
例えばそう、兄があまりに完璧すぎたら?
姉があまりにワガママだったら?
弟や妹があまりにアホだったら?
……想像してくれてありがとう。
だけど、我が家の「あまりに」はきっと君が想像した15倍はひどいものだ。
我が家は「あまりに」異常だった。
「空…。お前、さすがにこの不運は笑えないな」
陽兄はそう言いながら、それでも口元にはしっかり笑みを浮かべていた。
「職場が燃えてクビになった、ってなんだそれ?」
「だから、さっきも説明しただろ。
偶然に偶然が重なって、店の調理場が燃えたんだ」
俺の話を聞いた瑠璃姉が髪の毛をかきあげて、ブランド物の小さな鞄から、ブランド物の長財布を取り出す。
そして、お金だけ置いて立ち上がる。
「私はパス。
空のこういう不幸に関わって、今までロクな思いしたことないもん。
陽、なんとかしてあげなよ」
瑠璃姉が立ち上がると周りにいた男がざわついて、勇気ある一人が声をかける。
瑠璃姉は一瞬も見る事なく、そいつに蹴りを入れて、カフェから去っていった。
陽兄は腕を組んで、しばらく考えてから、大きな声で笑って俺の目をしっかり見る。
「なにがおかしいんだよ!」
「いや、店が燃えたのって先週の金曜って言ったな?
俺はその日、たまたま助けた初老の男性が資産家で、投資に協力してくれたんだよ。
いまの話を聞いてピンときたね。
お前は相変わらず、俺の幸運と引き換えに、不運に見舞われてる」
そして瑠璃姉と同じようにテーブルにお金を置いて、持ってきていたサングラスをかけ直した。
「何はともあれ、落ち着くまでは梅との同棲は白紙に戻っちまったんじゃないか?
少なくとも職場が決まるまでは」
「……他人事だと思って、面白がりやがって」
「俺にはお前の不幸は、天が与えた使命だと思うようになってきた。
そんなに気を落とすなよ。
使命を全うしたら、幸運がやってくるさ」
そう。
この物語は俺、八代空、八代家次男が様々な苦難と不運を乗り越え続ける話である。
「陽兄の会社で雇ってくれたりしないの?」
「は?お前なんか雇ったら、いつ会社が倒産しちゃうか分からないだろ」
そして俺の兄と姉と、弟と妹たちの異常で、愉快で、痛快で時々切ない、ファミリーストーリーである。
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