第9話

私は目を見開いた




私の声は音になってないのに古本さんに聞こえたから




「俺、読唇術が使えるんだよ」




『読唇術?』




「今は治ったけど母さんの声が出なくなった時期に小さかった俺が考えたコミュニケーションが読唇術だったんだ」




『そう、、なんでそれを使おうと思ったんですか?』




誰かに伝わるのが久々で私は踏み入ったことを聞いてしまった




やってしまったと思ったけど後の祭りで後悔の波が押し寄せてくる




「単純に母さんが辛そうだったから」




『、、?』




それってどう言う、、




「母さんはあんたと同じで筆談でコミュニケーションをとってたんだけど


それってすごい手間だし、俺と話すたびに『待たせてごめんね』っていつも冒頭に書いてあった


それがすごく嫌だった


だから、筆談をしないでいいように読唇術を身につけた」




『そっか、、』




言いにくいことだと思うのに古本さんは包み隠すことなく話してくれた




『教えてくれて、ありがとうございました』




私は感謝の気持ちを込めて頭を下げた




古本さんはちょっと照れくさかったのか、頭をかいていた




「あのさ、頼みがあるんだけど」




『頼み?』




「たまにでいいから匿ってくれない?」




あぁ、さっきみたいな状況の時にね




『嫌です』




もちろん断るけど




「は!?なんで!?」




『面倒ごとは関わりたくないですし、私は静かに本を読みたいんです』




「面倒ごとって人を厄介者みたいに」




実際そうでしょう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る