第70話

『あっち歩いて行った。』



そう言うとユウヤは


『そうか』



と言って追い掛ける訳でもなく俺の横に立ったまま話し始めた。



『アイツの気持ちも分からねぇ訳じゃねぇ。』



“ユカが傷痕を気にして肌を見せねぇのは分かってる。”


“だからあえて傷痕の事に触れないようにしてきたけど…”



“あの傷痕さえなけりゃ、ユカは風呂に入ってんだろうって思うとな…”


“楽しいか?って聞きたくなるわな。”



“しまいには気持ち悪い笑顔向けられて楽しいって言われてもな…”



“俺等の中に気にしてねぇ奴なんかいねぇから…”


“ユカは気にしないでって言ってんだろーけどよ。”



“もうすぐ夏服だ。”



“嫌でも出さなきゃならねぇんだ。”



ユウヤは分かってる。



チビの気持ちも。


レントの気持ちも。

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