愛はないけれど、お金持ちだったので結婚しました。
柚美。
プロローグ
第1話
私はお金が全てだと思っている。
お金があれば何でも買えるし、お金は人間のように裏切らない。
お金だけが、私を幸せにしてくれる。
友達は大事と言うけれど、友達が何をしてくれるのか。現実問題、私は友達だと思っていた子に、ありもしない事で疑われ、裏切られた。
家族は家族で、私を必要としていなかった。
優秀で器用で天真爛漫な姉と、地味で不器用で何の取り柄もない私。
家族が優先するのは、いつも姉だった。私はいてもいなくても、どっちでもいい存在。
そんな姉も、つい最近突然カミングアウトして、家出同然で出て行った。
両親は、そうなって初めて私に目を向けた。
散々私を苦しめて、今更私に何を望むんだ。ほんとに迷惑でしかない。
「君の大切な人生を、俺の勝手な理由で縛り付けるんだ、金は好きに使って貰って構わない。君に不自由はさせないと約束しよう」
そして私は、目の前にいる堅物そうで真面目で、お金をたくさん持っているこの男と、愛のない結婚をする。
この男の好きな人は私ではなく姉で、私を身代わりにするのだ。
それを私もちゃんと理解して、納得している。
お互いの利害が一致した契約結婚。
彼の奥さんとして世間さえ騙せれば、後は何をしても自由。
お金は好きに使えるし、家事もしなくていいし、子供も作らない。
その他諸々、私にはまるで天国のようだ。
姉の代わりさえ務めていれば、彼は満足なのだ。
何故こんな好条件の男に姉が靡かないのか、誰もが皆不思議に思うだろう。
私の姉は今頃、外国で恋人である女性と幸せに暮らしている頃だ。
そう、姉の恋愛対象は女性で、女性の恋人がいて、男である彼には全く興味が無く、恋愛に発展する事は不可能だった。
それでも諦めきれない彼と、彼のお金が欲しい私は、結婚を決めたのだ。
酷いと言われても構わない。
私はお金しか信用しない。
男も友達も、家族もいらない。
お金だけが、全てだ。
お金があれば、幸せだから、それでいい。
私の人生なんて、ロクなものじゃないから、今更どうこう足掻いたところで無意味だ。
これは私にとって、チャンスなんだから。
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