第25話

人の気持ちっていうのは複雑だ。



いつからなのか分からないけど、わたしを長いこと想ってくれているであろう薫くんではなく、どうして別の女の子を好きな藍を好きなんだろうか。



「てか、こんな話…薫くんにするのもおかしいよね」



わたしを好きだと言ってくれてる人にわたしの好きな人の話って…あまりに無神経すぎた。



さすがにどうかと思い直し謝ろうとすると、穏やかな男はフッと笑った。



「いや、光が話してくれるなら俺は構わないよ」


「…そうなの?」


「知らないところで話が進んでる方が、余計ダメージあるみたいだから。」



あるみたいって……。



そういえば藍の存在を知った時に、薫くんの様子がいつもと違っていた。



あれは薫くんの中で"ダメージ"ってやつを喰らっていたから?



「まあ、だからさ、俺のことは気にしないで話したい時には何でも話してよ。」



優しく言われ、そういうものなのかと納得したわたしは軽く笑って頷いた。



まあ本人がいいなら悪いことは何もないわけで…。



「分かった。今まで通り、薫くんには話したいように話すよ。」



わたしが簡単に言うと、薫くんは眉を下げてフッと笑った。



「やっぱり、好きだな。光のそういうところ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る