ゴンゾウ70歳、機械世界に転生する
ゆずリンゴ
目が覚めたら機械の世界
「退屈じゃ!」
くの字に曲がった腰に手を置いた老人、
田中ゴンゾウ(70)はローンを支払いきった一軒家の中でそう呟いた。
―――ゴンゾウは退屈していた。
学生時代に彼女をNTRされ恋愛に恐怖抱いたことをキッカケに恋人をつくることを諦めたゴンゾウは妻もいなければ子供なんているはずも無い。
唯一あるのは若い頃に「家があれば勝ち組だ!」という考えの元、ローンを組んで購入した一軒家のみ。
だが1人で住むには無駄に広く、掃除の手間を考えればマイナスの事ばかりだ。
そして学生この頃に絡んでいた奴らには家庭を持っている事に嫉妬して頑なに連絡を取ろうとしないのだから仕事も退職した今はゲームくらいしかやることない。
―――まぁ、そんなゲームも得意ではなく下手をすれば仕事をしていた頃の方が人生を楽しんでいた程なのだが。
「あぁ⋯⋯何でもいいから退屈から解放してくれないかのぉ⋯⋯」
そんな事を呟いた瞬間だった!
『ごぉぉぉぉぉ』という音近づいてきたのだ!
「おぉ?なんじゃ⋯⋯どこかで飛行機でも墜落しとるのか?んんっ!?」
否!確かに墜落しているがそれは飛行機では無い!
墜落してきたのは『潜水艦』だった!
親方!空から潜水艦が!
「空から潜水艦?!それも段々と近づいて―――」
ついに
◆◆◆
「ぐごごごご⋯⋯っ!なんじゃ!ワシはさっき⋯⋯」
自らの凄まじいイビキで目を覚ますと自分の置かれている状況を判断しようと少し前の記憶を探る。
「確か潜水艦が⋯⋯それでここは家じゃ⋯⋯ないみたいじゃのぉ⋯⋯だが天国のようにも見えんな」
先程まで家にいたはずだったがゴンゾウが目を覚ましたそこは海岸のような場所であり波の打つ音が耳に刺激を与える。
「⋯⋯ここは一体どこか、ついにボケてしまったか⋯⋯?じゃがどうにもおかしな場所じゃ」
そう、明らかにおかしかしい。
辺りが暗いのだ。それは夜だからという理由では無い。確かに空に太陽は無いのだが同様に月がある訳でも無ければ星も見えない。
「はて、どうしたものかのぉ⋯⋯」
目が覚めたら知らない場所で自分はどこにいて何をするべきか、その判断がつかないでいたそんな時だった―――
『⋯⋯およそ100m先に異常を検出、直ちに捕縛する』
まるで感情が無いのかと感じさせる男性らしき声が聞こえたかと思えば5秒にも満たない時間でゴンゾウのすぐ目の前に現れた。
その容姿はどこにでもいるような青年であり、服装も長袖に長ズボンと変わった様子は無いように見えるが⋯⋯あまりにも移動する速度が異常であり、それは瞬きすらしていない。
「だ、誰じゃ?ワシはゴンゾウだ、とりあえず助けてくれ!ここが何処か分からないんじゃ!」
そんな男性の異常に気づくことなくゴンゾウを助けを求める。
『⋯⋯ピピッ、生命反応あり、疑似生命反応無し⋯⋯この人物を捕縛せよ』
「⋯⋯?」
男性の目が赤く光ったかと思えばそんな言葉を呟き、今度はゴンゾウを抱き上げたかと思えば物凄いスピードで移動を始めた。
「―――っ!なんじゃ、老人にいきなり何をする!速い!怖いぞ!スピードを落とせ!」
余りのスピードにゴンゾウは心臓が止まりそうになりながらもそんな事を呟いた。
『⋯⋯』
「⋯⋯?なんじゃ、スピードを落とせとは言ったが止まるなとは⋯⋯」
『―――危険な生物が急速に接近、排除せよ、排除せよ、排除せよ』
いきなり止まったかと思えばうわ言のように『排除せよ』と呟き始め―――それと同時に『バサッバサッ』という音が小さいながらも聞こえ―――
「おいお前⋯⋯人間だな?」
『排除!排除!』
「⋯⋯お前に用はない!我はそこの人間に用があるのだ!」
そう言うとコウモリのような見た目の生物は身長は210cm程、整った顔は死体のように白く、髪もゴンゾウの1週間前に散った最後の1本と同じ美しい白をしている。
「―――散れ」
巨大な男がそう言ったかと思えば次の瞬間ゴンゾウの横にいた男の首が吹き飛んだ。
「⋯⋯ひ、ひ、人殺しぃぃぃーーー!!」
その光景にゴンゾウはつい悲鳴を上げてしまう。
「おい、大声を出すな!他の廃人が集まって来るだろう!⋯⋯いや、既に手遅れのようだな」
巨大な男の忠告も虚しく、既に何十人かの男達が接近してきている。
「ちっ⋯⋯力は温存せねばならない⋯⋯ここは―――行くぞ!」
そう巨大な男が言ったかと思えば大きな翼を生やしてゴンゾウの手を掴んだ末、空中へと浮かんだ。
「はぁーはっは!残念だが貴様らではまだ飛べんからなぁ!ここは逃げさせてもらう!」
「まっ、高い!老人にこの高さは心臓に悪い!」
「黙れ!舌を噛み切らぬよう黙ってろ!」
そうして巨大な男の腕の中に抱かれたゴンゾウは何処かへと連れ去られて行くのだった。
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