第5話 三船の胸のうち2
「そだね。甘いの、少し苦手で」
「そうなんですか」
「うん。だから一杯目は必ずブラック。カフェラテとかは、二杯目からかなぁ」
「なるほど」
「三船くんは、逆に甘くしたい方?」
「え?」
そう、こうやって、先輩は自分にちゃんと、問いかけてくれる。
先輩と出会ったのは、大学2年生の時。
新歓時期に、1年生と間違えて勧誘を受けた、アウトドアサークルのメンバーの中のひとりだ。
説明を受けて、アウトドアを活動の中心にするサークルなんかあるんだ、と少し興味が湧いて。
でも自分が2年生であることを話すと、そっかぁ、と、他の皆は割とすぐ退散し始めて。
そんな中、自分が興味を示していることに、気づいていて、話を続けてくれた。
そのまま自分はサークルに入って、先輩を遠巻きに見つつ、活動に参加してる。
「だってさっき、まだ苦そうな顔してたもの」
「あー・・・実はそうなんです、結構、砂糖使わないと駄目で」
「じゃあ、私の分も使っていいよ?はい、どうぞ」
差し出されたシュガースティック。
先輩の、こういう細かい所で見せてくれる配慮。
素敵だなと、これまで何度思ったことだろう。
感傷に浸りつつ、そのシュガースティックを有難く受け取った。
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