愛花と清佳

ヤキモチの矛先には。-3-

押し問答を一通り繰り広げた後。

「だから、見方の問題、なのよ」

清佳は再びこの言葉で、決着をつけた。

清佳の説明を要約すれば。

社長は相手方の提案内容に、興味は持っていた。

ただ、相手方の示す資料の数字の根拠に、

不備があるのでは、との懸念があった。

そこで、相手が真に、共に仕事をすべき相手なのかを見定めるためにも、社長は清佳と示し合わせて一芝居を打った、ということのようだった。

「…そんな、この世のものじゃないもの、見たような顔しないでよ」

あまりにしょぼくれた愛花の表情に、呆れつつ清佳は会話を続けることを試みる。

「…私には、そんな芸当、一生出来ないと思います」

「出来るようになるわよ。あの、社長の傍で仕事してたら、誰でもそうなるわ」

と、不意に笑顔の零れる清佳。

その笑顔を目にした愛花は、

少しぬるくなった珈琲に口をつけ、

少し間を置いて言葉を零した。

「…なんか、妬けちゃいます」

少し茶化してみたつもりの清佳に対し、

予想外の愛花の反応。

負けじと、清佳は少し趣向を変えて、

言葉を続ける。

「んー…まあ、確かに、私の方が社長の傍にいるの長いし、案外難しいことなのかもね」

「…それ、フォローになってないですよ、先輩」

「やっぱり？」

そのサバサバとした表情に、

愛花は軽くため息をつきつつ、もういいです、と言わんばかりに珈琲を飲み終えた。

対する清佳は苦笑しつつ、

珈琲の最後の一口を飲み干すと、告げた。

「じゃあ、そろそろ時間だし、お店出ましょうか」