Episode23【緑】

【緑】

 この日も、美しい青空が広がっている。


 舞い降りる、美しい翼を持つ、たくさんの鳩たち。


 緑は鳩たちを見て、嬉しそうに、優しい笑みを作る。


「お腹すいたでしょう? 今日も、たくさんご飯、持ってきたからね」


 緑は鳩たちに語りかけると、さっそく、餌をまいた。

 鳩たちは、せっせと餌を食べる。


「おいおい、相変わらずだな? ……──」


「あら、アオイじゃない。 何か用かしら?」


 緑の目の前に現れたのは、ブルーソードだ。彼の本名は、“葵”と言う。


「一応、報告に来たんだ」


「? ……」


「今になって、どうしてユキや陽介が、危険にさらされることになったのか……黄凰や紫王が、何故あんな、暴力事件を起こしたのか、糸引いていたのが、誰だったのか、その目的が、なんなのか、全て、明らかにされた。 ……──だから、報告だ」


「……――」


 緑は鳩の餌の入った器を抱えたまま、黙りこんだ。


「聞くだろう? ……――レッド エンジェルも、関係してる」


「聞く……」


 先ほどまでは、躊躇っていたようにも思えるが、二回目の問いには、緑は『聞く』と即答した。


「そう言うと思った。 話す前に、聞いておく。 これから、真実が明かされるわけだが、その真実を知ったら、緑は、誰を信じて、誰の味方につく? ──」


 すると緑は、首を傾げる。


「当たり前じゃない。 私は、私の大切な人の、味方よ。 言い換えれば、大切な人だけにこだわる訳であって、その他の、真実だの、善悪だのは……気にしないわ」


「緑は、ユキだけの味方か?」


「えぇ。 雪哉の味方よ。 けど、雪哉だけの味方でもないわ」


 緑は意味深に、ニッコリと笑った。

 ブルーソードは、納得したように頷く。


「敵でも味方でもない。 どちらにつく、という訳でもない。 だが、強いて言うなら、大切な人たちだけの、個人的な味方……って感じか? まぁ、緑にはそれが似合う」


「えぇ。 そんな感じよ」


 緑は比較的、落ち着いた様子でそう言った。

 その様子に安心したように、ブルーソードは、明かされた真実を、緑にも伝えるのだった。



 ……──緑は美しい青空を見上げながら、真実を聞いていた……──



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