第20話

「おはよう、仁奈」


(香月雅……!)



突然現れた人は、まるで空気を操っているかのように。この場にいる全員の視線を、一瞬にして自分へと集めた。


黒色の猫毛から覗く漆黒の瞳が、私を捉える。鈴木くんの言葉で、少し凹んでいる私を。



「そう言えばさ」



同じクラスだから、下駄箱の位置も大体同じ。香月雅はシューズを床に落としながら、横目でチラリと私を見た。



「告白の返事、考えてくれた?」


「……へっ?」



今、この環境で、自分が注目を浴びていると知りながら、この発言。


急な爆弾発言に、周りの女子も男子もお祭り騒ぎとなる。



「えー!?あの雅くんが告白!?」

「じゃあ鈴木と小里が別れたのって、香月が原因!?」

「じゃあ三人は三角関係ってこと!?」

「小里さん羨ましいー!!」


(じゃあ代わってください、お願い……!)



もちろん私の悲痛な叫びは、この男により阻止されるわけで。



「それに、朝は一緒に行こうって言ってたのに。どうして早く行くかなぁ。あ、もしかして恥ずかしかった?」


「一緒にって……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る