無理やりのキス

第7話

「あなたと付き合って……良いこと、あるの?」


「かわいい顔して意外に辛辣だなぁ」


(だって)




私、見ちゃったんだもん。


入学式が終わって一週間が経った頃。新入生で一番美人と噂の姫岡さんが、トイレで泣いているのを。私は、この目で見たんだ。




『雅くん、私と付き合ってるのは本気じゃないって。他の女子と接触するなって言うなら別れてくれって。そう言われた……っ』


(うっわ……最低)




ちょうど手を洗っている時に、聞いてしまった。新入生で一番イケメンと言われる、香月雅の本性を。


友達が傷つけられて泣いているんだから、姫岡さんを取り囲む女子たちは、これから香月雅に対する罵詈雑言を言うに違いない……って思っていたら。


耳に入って来たのは、とんでもない言葉。




『さすが雅くん。ドのつくクズだわ』

『でも隠れて浮気するより良くない?』

『思った。いっそ清々しいよね』


(これは姫岡さん、相当に怒るんじゃ……)




自分の肩を持つかと思いきや、まさか香月雅の肩を持つ親友たち。姫岡さんが怒るのは無理ない話だ……って。そう思っていたのに。

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