第5話

「彼氏がそれを、彼女に言っちゃダメじゃん……」




品行方正に、とまでは言わないけど。せめて最低限のマナーは守ってほしい。


一度でも「付き合う」と言ったなら、相手を大切にしてほしいし、傷つけないでほしい。オブラートに包んで、とまではいかなくとも、ピザのチラシくらいには包んでほしい。




「でも恋を知らない私も悪い……か。でもさ、みんな見様見真似で恋してるんじゃないの?生まれた時から頭に〝恋の仕方〟がインプットされてる人はいないでしょ?」


「インプットされていなくても、アップデートくらいは皆してるんじゃないの?」


「なるほど……ん?」




その時。

気付いてしまった。


湿気でもない、雨でもない。

鼻孔をくすぐった、あの独特な匂いの正体を――

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