白菊に雪は降り積もる

入江 涼子

一章 年頃の姫は悩む

第1話

 はらはらと雪が空から、落ちてきて、宙を舞う。

 それを目で追いかける。

 髪や肩、袖もとにかかってはすぐに消えてしまった。

 きれいだけど、はかないもの。

 私はため息をついた。

 白く色づいて、それも消えてしまう。

「寒くなったわ。たく、母様と父様てば、嵐山に二人で出かけて、妹達をよろしくお願いねって、言づてだけで。私を置いていくなんて、どうかしている」

 がたがたと震えながら、一人で恨み節を続けた。

 そう、今年で父様は三十七歳になり、母様も一つ上で二人とも、けっこういい年なのだ。

 けれど、新婚の時と変わらないくらい、仲が良い。

 見ていて、恥ずかしくなるくらいには。 まあ、若い頃は独身を通すと豪語していた母様を口説き落とし、結婚まで、こぎ着けた父様はなかなかのやり手だ。

 私は秋に生まれたから、父様が菊子と名付けた。

 唐突だけど、父様は現在、内大臣の位にあり、母様はその北の方として、私以下、四人の子をもうけている。

 今は御代も変わり、かつての東宮ー淳明親王が新帝に立たれた。

 私から言うと、父方の叔母に当たられる梅壺女御様が新帝の后になられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る