第11話 2008年7月30日(水)稲ちゃんと夜更け

2008年7月30日(水)稲ちゃんと夜更け


まんまるお目目をつむった稲ちゃんは、もうねんねです。


ぎゅうぎゅうと、お気に入りのコンコンの尻尾に顔をすりよせます。




神具屋から見える月のでかいこと!


それから、川の静かな音が、山々に響きます。




4時ごろになると、お店の人達は、朝ごはんを作ります。


色々な食事。




でも稲ちゃんは、伸びをしてころんと、寝がえりをうちます。


他のコンコンは、じっと待っています。


先ほど、雲に月が隠れました。


こんな夜に、紫式部は歌をよんだのでしょうか。




雲がくれにし夜半の月かな




稲穂コンコンは、稲穂を振って、豊作の祈願を静かにします。


夜の空には、星がひとつふたつみっつ・・巻物コンコンは、数えていました。


幾千の空が導く夜の世界。




ぼっと炎がともると、こうこうしい神さんが、笛をふきます。




ほーほろほー、ほーほろほー。


ほろほろほろーほ、ほろほろほろーほ。


ほろほろ。




次第に朝は眠っていたコンコンが、目をさまします。




きゅーんきゅうん。


きゅーん。




遠くの山で鹿がなきごえをあげました。


鹿島神社の音でした。




道々に落ちている屑がとけていきます。


星の線路がひかれていきます。




また、稲ちゃんは、尻尾をふろふろさせています。




ぼっと、今、稲ちゃんの神具屋にも、夜のコンコンが、尻尾の炎で、あかりをともしてゆきました。




おしまい。





作成者 凪ナル : 2008年7月30日(水) 01:25

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