第559話
伊織くんに抱き締められたまま、だから。
伊織くんの表情は、わからない。
でも、伊織くんが、望んでくれるの、なら。
伊織くんの首の後ろに、両手を回す。
繊細な金具に、触れる。
思いきって、金具を外した。
思ったよりも、ずっと簡単に外れるんだな。
そのまま、伊織くんのてのひらに、ゆっくりとクロスのネックレスを、置いた。
「…ありがと、海乃さん」
茶色の、髪の毛。
寂しくなった、胸元。
いや、これからたくさんのハッピーで満たせばいいのだ。
伊織くんと、私の、ふたりで。
『『出逢えて、良かった』』
『触れたい、cross』
─end─
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