第83話

来店を告げる、チャイムの音に反応して、『いらっしゃいませ』言いながら、顔をあげる。



「…おー、今日もそのペラペラの帽子、似合ってないっすねー」



ニヤニヤと笑いながら言う、伊織くんが立っている。



こうして、お店に来るたびに、



「挨拶、棒読みー」



とか。



「そのオレンジのエプロン、ちょーダセー」



とか。



いろんな言動で、私を茶化してくる、伊織くん。



「うるさいなー、もう!」



笑いながら返したら。



「さーせん」



言いながら、伊織くんが軽くアタマを下げる。



このやり取りも、毎回の、こと。




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