第61話
「…私だったら、大丈夫、だから。ここで寝るから、大丈夫」
何か言いたげな表情を浮かべている、伊織くんを遮った。
ほんとうに伝えたいことは、他にあるのに、そんなコトバしか出てこない。
「…なんで、ホントのこと、言わないの…?」
伊織くんのコトバが、宙を舞っていて。
その視線が真っ直ぐに、私を射ぬく。
…あぁ、まただ、と、思う。
私のココロの底を、さらってしまうのだ…
伊織くん、は。
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