1.とある出会い系マニュアル師
第2話
「伊佐木君、出版志望の人が現れたよ。対応して!」
伊佐木勇、今回の物語の主人公的人物だ。中肉で背はひょろっと高く。180cmもある。もともとはラグビー部に所属していたが、大学を卒業し、運動から去っていたせいで、筋肉がなくなり、中肉となり、しょんぼりして、またジムにでも通って、筋肉をつけようかしらんと思い悩む日々である。
ここは、集高社の社内。なかなかメジャーな出版社で、そこに勤める伊佐木もかなり自慢げだ。
ともあれ、来客ということで、伊佐木が応対する。
間仕切りされた個室の会議室に伊佐木が出向くと、初老のなんの変哲もない夫人が待ち構えていた。
なんの変哲もないとは、60歳なら、60歳らしい、身なり服装で、しっくり落ち着いている感じ。だが、その夫人の言い分に伊佐木は驚いた。
「死んだ息子のサイトを書籍化して欲しいんです!」
その初老の婦人は言った。
「どんなサイトですか?」
伊佐木は尋ねる。
「は、はい、プリントアウトして来ました」
「どれどれ」
手慣れた様子で伊佐木がクリップで止められたA4用紙をめくっていく。
「こ、これは」
「はい」
「咲斗。ニュースで見ましたよ。脳みそが真っ二つに割かれ、死んだ出会い系マニュアル師でしょう?そうして、これは、不倫専門の出会い系マニュアルですか?」
そこまで言うと、夫人が意気込んで話す。
「はい、そうなんです。息子はすごく頭がよくてコラムやマニュアルを書くのが得意なので、マニュアルが300に及んでます。書籍化できそうですか?」
夫人の言葉に伊佐木は、げんなりして答える。
「不倫、出会い系、ですか?」
「すごいでしょう!親ながらも息子を天才だと思ってます。どのマニュアルもツボが押さえられ、本当に効果のあるものだと思います」
夫人の言葉に茫然とする伊佐木。
「本気ですか?」
「は?」
「本気ですか?これ、くずじゃないですか?これ、このくだり。主婦は旦那様とのセックスをたっぷりしているので、セックスが得意になっています。そうして、その旦那様ごとに、セックスに癖があるので、並行して複数人と不倫をすると、各主婦ごとに、セックスに個性があり、すごく楽しいです。くずとしか思えません!」
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