第28話

殺すという単語の

語尾に力を入れる

カルマン大統領。


そうして電話口。

『殺す?』

『大統領、バックアップの

データーも半分消えました。

ホストコンピューターの

データーはないです』


唖然とする

カルマン大統領。

世界警察はほっと

胸をなでおろした。


―ここは

大司教のミサ。

長いいのりの時を経て、

盛大な聖歌隊の

讃美歌が流れる。


―ここは

ゲーム会社アクア。

「はらはらさせるぜ」

佐々木。

「どうやら、

間にあったようね」

背後に、

ザ・ワールドが

流れる。


―記者会見場。


叫ぶ、カルマン大統領。

「どうにかしろ!

お前ら、殺されたいのか!」


また殺すという単語が

出て来た。


『殺す?』

『え? 殺す?

今、何とか復旧させるために

頑張っているんですが』


そう言い、電話口の

軍曹はなかばあきらめ気味に、

そうして、なかばこれは

馬鹿な行為か? と思い、


ホストコンピューターに

バッグアップを再びつなぐ。


馬鹿な行為?


いいえ、

イリアの軍曹は

カルマン大統領への

信奉を2度の殺すという

発言で失いました。


でしょう?

当然のごとく

バックアップのデーターも

消えた。


『大統領、おしまいです。

兵器のデーターは

完全にゼロです』


そこまで言った軍曹が

襟を正し、静かに

カルマン大統領に告げる。


『そうして、何度も殺すと言われた私、

というか、我々は軍隊を辞めます。

大統領のために、今まで本当に

尽くして来たのに』


「なんなんだ、

一体なんなんだ!」


叫ぶカルマン大統領。

言葉を続ける、軍曹。


『今回のイリアの

飛んでいた無人飛行部隊は

全部、墜落しました』


「なんなんだ、

一体これはなんなんだ!」


世界警察にはがいじめにされ、

虚脱するカルマン大統領。


「ブラボー!!!」

立ち上がり、叫ぶ記者伊藤。

みなも立ち上がり、手をたたく。

カメラは回されたままだ。


「神が我々に味方した!」

そう言って、世界警察が

カルマン大統領の手首に

手錠をかけようとする。


すると

拳銃を取り出した

カルマン大統領が、

世界警察の手をのがれ、

手近な女記者に腕をかける。

そうして、女記者の

こめかみに拳銃を突き付ける。


とまどう

世界警察。

カルマン大統領を開放する。


「私は、官邸に戻る。

私は捕まらない」


会場が騒然とする。


ぎょっとする

カルマン大統領。

脳内を讃美歌が流れる、

イリアの讃美歌だ。


そのボリュームが

盛大となる。


思わず、

拳銃を突き付けていた

腕がゆるむ。


予想しない動きに

内心え? っと思ったが

その隙にカルマン大統領の

拳銃を世界警察が叩き落す。


そうして、

取り押さえられながら

カルマン大統領は

絶叫する。


「うるさい!

なんだ! 音を

小さくしろ!」


―ここは教会。

大司教が信者たちと

祈り続ける。


「やめろ!!!

ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


あまりの

音の大きさに

絶叫するカルマン大統領。


頭を押さえると、


<私は神だ!>


頭を振り返り、

必死に声の主を探ろうとする。


誰かが口を開いた

ようにも見えぬ。


讃美歌が

心地よいボリュームとなり

何者かがしゃべる。


<お前は間違っている!

お前を滅ぼしに来た!>


そこまで言葉を聞くと、

カルマン大統領は

地べたに突っ伏す。


泣いているのか?

そんなわけはなかろう。


カルマン大統領は

世界警察に取り押さえられ、

全てが終わった。


全世界に

放映された、

カルマン大統領の

逮捕劇


みなが、

泣いて喜んだ。


【完】

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