06.パチンコ狂

第14話

人類最期の

パチンコ店。


「うぉぉぉ!!

フィーバー来い来い来い!」


一人の

スーツ姿の男が

パチンコ台に座っている。

山下卓也だ。


それを覗く

ジャンパーの男。

白髪交じりの

無精ひげが目立つ。鈴木元。


「お! 兄ちゃん、

久しぶりだね」


「あ、ゲンさん。

今日は人類最期の日なんで、

大好きなパチンコをしに

来ました」


「今まで

会えんかったな!」


そう言うと、

元は山下の横の台に座る。

そこが特別いい台と

いうわけでもなく

ただ会話をしやすくするためだ。


「そうなんですよ。

嫁が節約家で

節約生活を送っていたもんで、

パチンコをしばらくやめてました。

マイホームも建てたんですよ」


そこまで言うと、

山下はまた玉を打つ。


「お!

すごい立派。倹約家の旦那様の

最期がパチンコ台か?

ギャンブラーだね!」


「ゲンさんもじゃないですか?」


そう言い返す山下。


「わしはずうっと

毎日のように通っているから」


元は煙草に火をつけ

ふかす。ロマンスグレーという

には、品がない、動作。


ギャンブラーの魂か?

山下が元を振り返る。


「明日は世界の終わりの日。

今日は、給料全部突っ込む気で

来ました」


山下の言葉にからから笑う

元。鼻からたばこの煙を

吐き出す。


「3万くらいまでにして、

バラの花でもかみさんに

買って帰りなよ」


「帰りませーん!」


元の言葉を

聞いてもパチンコに

夢中の山下。


「うぉぉぉ!!!!

フィーバー来たー!!」


じゃらじゃらと

山下の台にパチンコ玉が

出てきて、慌ててプラスチックの

ケースにつめて行く。


「よっと!

一箱もらうよ」


「あ、ゲンさん、

なにそれ」


横取りした

ケースを一箱

元が笑いながら

自らの足元に置く。


「それで打ち止めにして、

かみさんと子供に

景品持って帰ってやりな」


にっかと笑った

元の歯はたばこのヤニで

黄ばんでいる。


「ゲンさん…」


「行きな!」


「はい!」

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