第74話

「なにそれ? 新しい遊び?」

今度は本当に興味を示したようだ。素で反応する藤井。藤井の反応に、ますます気をよくした笹山が得意げな、だけど小ずるい笑みを浮かべ、口を開く。

「こいつココ」

そう言うと、笹山は自らのこめかみを人差し指でつついてみせる。

「おつむ。絶対、栄養足りてないっしょ? 光合成もできねーし」

「ちょー笑える」

他のもの達もみるみる反応し始めた。

「新種の王様ゲーム?」

「いーねぇ、ポイント有りってのが、燃えるねー」

光合成の言葉の意味が分かるもの、分からないもの全てがひっくるめ雰囲気で笑い出す。いつだってこの手の集団を仕切るのはいっとう面白いゲームをひらめく野郎だ。世界はつまらない。少年たちはいつだって娯楽に飢えている。なんだっていい、面白ければ。なんだっていい、暇さえつぶせれば。なんだって。

笹山は人物としてはあくまでも小物だが、こういった暇つぶしに最適な下劣なゲームをひらめく能力には最高に長けていた。そこが人望がなくともチームを小さく仕切れる一つの要因でもあった。三度に一度の割合で、チームの連中たちが笹山のひらめくお遊びに乗っかるのだ。鷹山もその点を買っていた。そうして今日も残りを任せた。笹山とその取り巻き数名に。

ますます増幅した笹山が声のトーンを大きくして言葉を発する。

「肥料だよ肥料。栄養欲してる」

そうして笹山は、ひねりある毒舌を悪趣味にも場にそぐわず品よく言ってのけるも、すぐ脇から藤井が横槍を入れてきた。

「けどよー、肥料ならむしろ、うんこの方がいくね?」

藤井の途端に切れる笹山。

「じゃあ! お前やれんのかよ、今ここでよ」

己の毒のあるユーモアを下手な横槍でぶち壊されたと感じた笹山が打って変わった形相で吐き捨て、藤井を片腕でどつく。

「無理だよ、できねーよ」

と藤井。笹山の迫力に気おされ気味だ。

「やれもしねーこと、脇でごちゃごちゃ言うんじゃねーよ!」

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