第27話

「君は、確かにクローンだけれど、岡部涼花とは別人の人格だし、体も別物だ。君とセックスをして、岡部涼花の子供をはらませようとしたことを、心底謝りたい」


そう言って、椎野は土下座した。椎野は美鈴を見上げる。


「君は素敵なアイドルに育った。本当に君は素敵だ。本当に本当に素敵なことが起きた」


美鈴は椎野の言葉に絶望した。そのまま自らのパンストの足を岡部涼花と思い、舐めなさいと思ってしまったが、そんなことは起きることなく、美鈴は父、椎野の両肩に手を添え、絶望を覚えながら言う。


「お父さん、よかった。お父さんの目が覚めて。美鈴と岡部涼花は別人だから、それがわかって、本当によかった。お父さん」


そこまで言うと、美鈴はくるりと椎野に背を向ける。美鈴はその背中を椎野に抱き寄せられることを夢想したが、それは幻想だと悟る。


美鈴は本当に椎野の子供として、素敵なアイドルとして、活躍し続けなければならないと思った。家を出ようかとも思った。そこまで思い、美鈴は自分の性欲に愕然とした。美鈴は椎野と愛されないセックスをしてよかったわけではないと思った。


枕に突っ伏し、キスをする。気持ちいい。

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