第19話
「ん?」
清貴が呼ばれて振り向くと、そこには、怖い顔で仁王立ちした早苗が待っていた。早苗は清貴の手をおもむろに掴みあげると、その手のひらにたっぷりの接着剤を絞り出した。例の超強力な代物だ。
ペタン。
「一生、そうしてなさい」
そう言い放つと、早苗はさっさとその場を立ち去って行く。
「あ、おいちょっと待ってくれよ」
追いかけようとする清貴の手には、バス停がしっかりとくっつけられていた。バス停に並んだ人たちは怪訝そうに清貴を見つめている。
「待ってくれよ、ホンノ出来心だって」
「知らない!」
どんどん足を早め遠くへ歩いていく。
「早苗~。待てよ~」
清貴が情けない顔で叫ぶ。
「知らない! 知らない!」
「早苗ぇ~。早苗ちゃ~ん? 早苗さ~~ん?」
いくら猫なで声で呼びかけてもいっこうに足をゆるめる気配のない早苗。それを後からバス停を引きずりながら、必死で追いかける清貴。清貴にくっついたバス停が動く同時に、並んだお客も半信半疑で一緒に移動していく。
喧嘩するほど仲がいいって言葉。
はてさて、彼らには当てはまるのでしょうか?
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