四章:ジグザグカート

第12話

「そう言えば、あなたポトフ好きだったわね」




そう言うと美里はソーセージのパックを手にする。




ここはデパートの地下売場。商品の陳列されたショーケースの前で立ち止まる二人。




「いや、今日は君の好きな物を食べよう」




「あら、私はあなたの好きな物をつくってあげたいのよ」




美しい譲り合いの心である。もしも、世のカップル全てがこんな具合に譲り合いの心を持てたなら、もっと幸せなカップルが増えるだろうに…と作者はお節介な事を考えてみたり。




「いや、たまには君の食べたいものにしよう」




「あら、私があなたの好きな物を作りたいって言ったら、作りたいのよ」




おや? だんだん雲行きが…




「聞き分けがないな。俺は君の食べたいもので、いいって言ってるんだ」




「聞き分けのないのは、アナタの方でしょ?」




譲り合いも程々に。




フンッ、早苗の言葉に清貴の鼻息が荒くなる。

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