第23話

テンポよく遠ざかるヒール音。




しょうこの去り行く姿を首ごと動かし、しばし視線で信也は追う。しょうこは相変わらず可愛かった。キュートで華やかなファッション、風になびく長い巻き髪、スレンダーなボディ、白い肌、つぶらな瞳、長いまつげ。グロスに光るぽってりとした唇。見目麗しゅう、変わらず男らしからぬ美貌の持ち主だった。




ふいに力強く引かれる信也の上着、信也がギャルを振り返ると、


彼女が少しすねた顔で信也の顔を覗き込んでいる。




「信也君、なに余所見してんの! ご飯食べに行こうよー! デートの王道!」




「……」




しばし、しょうこの残像に毒され、ぼんやりとギャルを見下ろす信也。




「ほらほら!」




せっつくようなギャルに信也は、我に返り返事をする。




「はいはい」




「ホテルはその後よ」




ギャルの言葉。信也は再びしょうこの去りきった景色を一瞬だけ振り返り、そうして、心でつぶやく。




(ネカマでオカマだけど…ま、いいんでない?)



【完】

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