第28話

「お父さん。お母さん」




すっくと立ち上がる冴子。




「え?」




篠崎は冴子を不思議そうに見上げる。




「篠崎さん、黙っていてごめんなさいね。私、子供が産めない体なんです。だから、篠崎の思う理想の家庭なんてものは、作れないんです。私ではあなたにふさわしくありませんね。この度は、こんな私のためにお見合いにお付き合いくださってどうもありがとう」




冴子はそこまでスラスラと言うと微笑みながら平然とそして丁寧に会釈をする。そして見合いの席から立ち上がりすっとその場を立ち去ろうとする。




慌てふためく妙子の両親。




「冴子、冴子、ちょっと待ちなさい」




篠崎側の両親。




「ちょっと、斉藤さん、どういうことなんですか」




冴子の両親は冴子を追いかけようとするが、篠崎側の両親がひきとめ、それどころではなくなる。冴子は手の甲で涙を拭いながら、料亭の廊下を走る。

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