第25話

「君に障害があるって? どこがさ、君は五体満足だ。なんだってできる。どこへだって行ける。体が不自由な僕とは天と地の差だ。君は僕から見れば、充分恵まれつくしている。君は贅沢さ、わがままだ。悲劇のヒロインぶってるだけさ。そうして独りよがりの偽善者……」




男は言葉を続ける。




「そんな奴に上から目線で、とやかく言われたくないよ。君の善意の押し付けは、もう、うんざりだ。めざわりなんだ、僕の目の前から即刻消えてくれ。ほんっと、カンベンしてくれよ、もう、一人にしてくれ。僕のことは、ほっといてくれ!!!」




冴子は、泣きながら去っていく、うるむ瞳で何度も男を振り返り。男がひきとめてくれやしないかと、何度も何度も振り返る。しかし、男が冴子を省みることはなかった。冴子に背を向けたままだ。




冴子がすっかり去ったあと、男はその冴子の去った景色を哀しそうに見つめる。

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